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» 2013年11月01日 08時00分 UPDATE

中村伊知哉のもういっぺんイってみな!(39):親子丼とギョーザとカルボナーラの定食を設計する――マルチなメディアとデバイスとパーソナライズ (1/2)

“私は”親子丼とギョーザとカルボナーラを一緒に食べたい。を、あなたに代わって設計することこそが、これからのマルチなメディアに求められること、らしい。

[中村伊知哉,@IT]

中村伊知哉(なかむら・いちや)氏のプロフィール:

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慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授。京都大学経済学部卒業。慶應義塾大学博士(政策・メディア)。デジタル教科書教材協議会副会長、デジタルサイネージコンソーシアム理事長、NPO法人CANVAS副理事長、融合研究所代表理事などを兼務。内閣官房知的財産戦略本部、総務省、文部科学省、経済産業省などの委員を務める。1984年、ロックバンド「少年ナイフ」のディレクターを経て郵政省入省。通信・放送融合政策、インターネット政策などを担当。1988年MITメディアラボ客員教授。2002年スタンフォード日本センター研究所長を経て現職。

著書に『デジタル教科書革命』(ソフトバンククリエイティブ、共著)、『デジタルサイネージ戦略』(アスキー・メディアワークス、共著)、『デジタルサイネージ革命』(朝日新聞出版、共著)など。

中村伊知哉氏のWebサイト:http://www.ichiya.org/jpn/、Twitterアカウント:@ichiyanakamura


※編集部注:本記事は2013年10月25日に@IT「中村伊知哉のもういっぺんイってみな!」で掲載された記事を転載したものです。
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 先日、マルチスクリーンとソーシャルメディアに関するイベントに出演したところ、普段考えたことのない質問を受け、刺激になった。

 まず、「あなたのマルチスクリーン暮らしは?」という質問。

 ふむ。マルチスクリーンといっても、イメージが共有されていないよね。私はノマドワーカーで、自宅と3カ所のオフィスの間をぐるぐるしていて、それぞれテレビとPCが置いてある。つまり、スクリーンはマルチに存在する。でも、実際に使うときは1スクリーンのみだ。仕事場や自宅のほかの、移動中は手ぶらで構わんと考えるほうだ。

 一方、自分の息子たちは、居間でTVをネットに接続し、そのスクリーンの前でノートPCを開きつつスマホもいじり、計3スクリーン同時利用だ。同僚には、PCとタブレットとスマホとガラケーをカバンに持ち歩き、電車の中でもマルチスクリーンってのもいる。

 イベントでは、いろんなデバイスを使ってコンテンツを展開するビジネスが紹介された。家のテレビで見ていたドラマの続きを電車のスマホで見る。テレビのCMを街角のデジタルサイネージやオフィスのPCにも届ける。つまり、1コンテンツ・マルチスクリーン。

 この場合の“マルチスクリーン”が示すのは「あちこちにデバイスがあるけど、使うときは1スクリーン」のタイプだ。

マルチスクリーン――親子丼とギョーザとカルボナーラを同時に食べるのと同じ

 でも私は、別の方向――息子たちがやっている「3スクリーン同時利用」に可能性を見い出す。つまり、TVのコンテンツと、PCの情報と、スマホのソーシャルサービスが渾然一体となって1ユーザーを取り囲む構図である。マルチスクリーンに対して、通信・放送の“マルチチャネル”で、“マルチなコンテンツ”を届けるサービスだ。

 これまで、テレビ局は地上デジタル波放送で番組を届け、ネット企業はブロードバンドのネットワーク環境を活用してWebサイトを開設し、通信会社はモバイルネットワークでケータイコンテンツを送ってきたのだが、それじゃダメだ。マルチなデバイス+チャンネル+コンテンツをトータルに設計しなければ、1人のユーザーを捕まえきれない。

 つまり、ユーザーに頼りすぎなのだ。親子丼とギョーザとカルボナーラをコンビニで買ってきて食卓に並べて同時に喰っている私。楽しい。でもそれは、私に「コレが喰いたい」という欲求がハッキリしていて、それを編集する力があり、コンビニがそれを可能にしてくれるから、というだけに過ぎない。

 ホントはその渾然一体メニューを――私が同時に喰いたいメニューを、セットでパックにしつらえてハイって定食にしてほしいわけ。私が3スクリーンのばらばらなサービスを自分で編集して楽しまなくても、1パッケージで誰かが構成してくれるといいのに、と思う。

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