作家のエージェントって何? 『ドラゴン桜』『宇宙兄弟』の編集者に聞くこれからの働き方、新時代のリーダー(前編)(1/6 ページ)

» 2013年10月30日 08時10分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]

 佐渡島庸平――。彼の名前が一般の人に注目され始めたのは、1年ほど前からだ。2012年10月、講談社を辞めて、エージェント集団「コルク」を設立。彼は『モーニング』の編集者として、たくさんのヒット作を世に送り出してきた。『バガボンド』『ドラゴン桜』『働きマン』『宇宙兄弟』といった漫画だけではなく、小説にも関わってきた。いわば“ヒット作請負人”として活躍してきたが、なぜ講談社を飛び出し、エージェントの道を選んだのだろうか。

 「エージェント」を直訳すると「交渉人」とか「代理人」という意味だが、中には「“中抜き業者”のことでしょ」と思っている人も多いだろう。わざわざ誤解を招きそうな言葉を使っているが、佐渡島さんは「編集者を辞めたわけではありません。作家側の人間になるために『エージェント』という立場にこだわりました」という。これはどういう意味なのか? 編集プロダクションやフリーの編集者とは何が違うのか? Business Media 誠編集部の土肥義則が聞いてきた。全3回でお送りする。

プロフィール:

佐渡島庸平

 1979年生まれ。中学時代を南アフリカ共和国で過ごし、灘高校に進学。2002年に東京大学文学部を卒業後、講談社に入社し、モーニング編集部で井上雄彦『バガボンド』、安野モヨコ『さくらん』のサブ担当を務める。2003年に立ち上げた三田紀房『ドラゴン桜』は600万部のセールスを記録。小山宙哉『宇宙兄弟』も累計1000万部超のメガヒットに育て上げた。伊坂幸太郎『モダンタイムス』、平野啓一郎『空白を満たしなさい』など小説連載も担当。2012年10月、講談社を退社し、作家エージェント会社、コルクを創業。


起業して、1年が経過

土肥:コルクを立ち上げられて、1年が経ちました。これまでどんな仕事をされてきたのか? といった話をうかがいたいのですが、その前に「作家のエージェントって何?」と思っている人が多いと思うんですよ。既存の出版社、編プロ/フリー編集者と違って、どのような立場なのでしょうか?

佐渡島:下の図を見ていただけますか。これは既存の出版社のシステムですね。

土肥:これは理解できます。編集者は作家から原稿をもらって、それを編集する。そして作家は、出版社から原稿料などをいただく。

佐渡島:次に、編プロ/フリー編集者のシステムを見ていただけますか。

土肥:編プロ/フリー編集者の立ち位置が、微妙ですね。出版社側に半分ほどかかっている。

佐渡島:「フリーの編集者のほうが社員の編集者より自由」と思うかもしれませんが、決してはそうではありません。実際は、出版社側の人間なんですよね。例えば、出版社に「この企画はどうでしょう?」とおうかがいをたてなければいけません。また出版社側から編集協力費をいただいているので、出版社の意向で働く外部スタッフという状態です。

土肥:なるほど。

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