こういうニュースを見れば、多くは「フジのプロデューサーは知らなかったのね」と思う。要するに、制作会社の「単独犯」という印象になる。
わずか1日あまりの調査で、「番組に対して最終的な放送責任がある」(フジテレビと制作会社とのパートナーシップに関するガイドライン)というフジテレビプロデューサーを安全地帯へ逃がし、「下請けだけが悪い」とふれまわるのは、早々と「組織」から「個人」の問題へ目を向けさせようとしているのでは、なんて疑ってしまう。
なぜかというと、実は「あるある」の時もこれとまったく同じ理屈で真相をウヤムヤにしようとしたからだ。
総務省から原因究明を求められた際、関テレ側は、「ねつ造は孫請けの制作会社のディレクターの独断で行われ、下請けと関西テレビのプロデューサーが見抜けず、監督責任を果たせなかった」という調査報告書を提出。後にこれは突き返され、経営陣の責任まで追及されたが、関テレ側が「トカゲのしっぽ切り」で乗り切ろうとしていたことが分かる。
前回の“失敗”を教訓にすれば、いち早く「制作会社のディレクターの独断」というストーリーを世に認知をさせようという戦略になる。「発表」が早いのもうなずける。
本人もヤラセを認めているわけだから、フジ側がそう主張したくなるのも当然でしょ、というご意見もあるだろうが、今回の原因は「モラルの低い下請け」だけではない。「あるある」の時からなんら改善されないヤラセを育むテレビ局の「体質」にある。
テレビ業界はご存じのように、広告収入が激減しており、そのあおりをモロにくらって番組制作費が大幅にカットされている。では、その皺(しわ)寄せがどこにくるのかといえば、下請けだ。
番組のエンドロールを見ると分かるように、ひとつの番組でも、さまざまな制作会社が関わっている。こういう多くの下請けスタッフたちが、「ローコストで、いかに数字がとれるものをつくれるか」という熾烈(しれつ)な競争を繰り広げているのが、今のテレビだ。そこでジャッジの目安となるのが、「毎分視聴率」である。
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