メガネのネット通販で業界全部をひっくり返してみせる――Oh My Glasses、清川忠康社長これからの働き方、新時代のリーダー(1/4 ページ)

» 2013年10月29日 08時00分 公開
[岡田大助,Business Media 誠]

リニューアル記念企画「これからの働き方、新時代のリーダー」

「アクションリーダーの『知りたい!』に応えるオンラインビジネスメディア」を統一コンセプトとして、9月2日にリニューアルしたBusiness Media 誠 & 誠 Biz.ID。Business Media 誠では「アクションリーダーに会いに行く」をテーマに、さまざまな識者の方にお話を聞いていきます。

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 経済産業省の推定によれば、2012年(平成24年)の消費者向けEコマース市場規模は9.5兆円(前年比112.5%)と拡大傾向です。また、インターネット技術の進歩やアクセス端末の多様化によって、かつては「ECに向かない」といわれていた商材もネット上で購入できるようになりました。

 例えば、「メガネ」もその1つ。国内市場規模4000億円とそれなりに大きな商材であり、毎日のようにテレビCMも流れます。それでもEC化が進まない理由は、メガネが視力矯正器具であり検眼やフィッティングといったオフラインでの作業の重要度が高いから。また、顔の中心にかけるメガネほど、「似合う/似合わない」をじっくりと試してみたい商品はないかもしれません。

 今回、「これからの働き方、新時代のリーダー」に登場するオーマイグラスの清川忠康さんは1982年生まれの若き起業家。現在、世界的なメガネ生産地である鯖江(福井県)の製品や、同社のプライベートブランド「+omg」を中心とした100ブランド以上の国内外のメガネやサングラス4000種超を取り扱い、利用者が購入前に自宅でフレームを「お試し」(無料)できるメガネ専門ECサイト「Oh My Glasses」を2012年1月にスタートしました。

清川忠康

 「メガネ業界に革命を起こしたい」という清川さん。なぜメガネなのか? スタンフォード大学留学中に体感したベンチャーのあり方、そして失敗への考え方……、アクションリーダーとしての清川さんの起業家マインドをお聞きしました。今回お届けする前編では、Oh My Glassesのビジネスモデルのこれからと今後について。聞き手はBusiness Media誠編集部の岡田大助。

 →後編:「失敗することにびびってないか?――メガネECベンチャー創業者がスタンフォードで学んだこと

「オシャレ意識が高い人のメガネショップ」という仮説は崩れた

岡田: Oh My Glassesをスタートして約2年経ちました。2012年1月のグランドオープンの記事を書いたとき(参照記事)、鯖江を中心とした20ブランド約800アイテムでのスタートでした。「おっ、これはほかのメガネECと違うな」と思ったのは、送料無料、返品手数料なし、しかも購入前に5本までフレームを自宅で試着できるというZappos(ザッポス)風のサービスだったこと。そして何より、度数情報を送れば店舗に行くこともなくレンズの入ったメガネがオンライン完結で購入できることでした。

清川: そうでした。かなり早いタイミングで誠 Styleに取り上げてもらったのを今でも覚えています。だから、署名欄にあった「岡田大助」さんにはいつかお会いしたいと思っていました(笑)

岡田: あれから1年9カ月くらい経ちましたが、どういうユーザーがOh My Glassesを利用しているんですか?

清川: サイトの規模でいえば、月間30万ユニークユーザー(UU)まで成長しました。100万UUまでは伸ばさないととは思っていますが、有料広告をどんどん出稿してでも強引に伸ばすという方法はとっていません。Oh My Glassesのサービスを理解してくれるお客さんの間で、じわじわと伸びていったという感じです。でも、毎月コンスタントに2けた成長していますし、メガネしか売っていないECサイトとしては良い成長曲線を描いていると思っています。

 年代別にみると、20代はあまりいませんね。取り扱っている商品の平均単価が1万5000円以上と、いわゆる3プライスショップのメガネと比べると高いからというのもあるかもしれません。中心は男性では30代、女性では40代ですね。意外と「遠近両用レンズ」のニーズが高くて、これまでも問い合わせベースで対応しています。実は、年配層に高いポテンシャルがあったんだなと。これは当初の仮説とちょっと違っていましたね。

岡田: 当初の仮説?

清川: オープン当初は「オシャレ意識が高くて、セレクトショップなどでメガネを買う人」「メガネにこだわりがあって、ブランド指名買いをする人」を狙っていました。実際に3カ月ごとに数本まとめて購入される人もいます。でも、ここは十分に取り込めていません。これは、オシャレ意識が高い人たちが欲しいと思う商品が並んでいなかったからだと反省して、マーチャンダイジング(商品戦略)を全面的に見直しているところです。

岡田: では、利用者の圧倒的多数派はそうじゃなかった?

OhMyGlasses Oh My Glassesでも販売しているオリバーピープルズ

清川: はい。例えば、トム・フォードを始めとした世界中のセレブリティから圧倒的な支持を集めている「オリバーピープルズ」というトップブランドがあります。Oh My Glassesでも売れていますが、買っている人はブランド指名買いではなさそうなんです。「何となくサイトを閲覧していたら、これに出会っちゃった」というような感じですね。

岡田: リピート率という点ではどうですか? そういう「何となく出会っちゃった」という人は、あまり頻繁に買い替えたりしないような気がしますが。

清川: そうですね、リピーターはだいたい3割くらいですね。でも、メガネという商材の買い替え周期はおよそ3年くらいだと言われています。Oh My Glassesも3年目に突入するところですから、これからのリピートを期待しています。

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