製作スタッフだけでなく、ホアン・ダー役のホアン・ボー、イエ・シュン役のリン・チーリンらキャスト陣も原作を深く研究していた。特にリン・チーリンは高校生のときに『101回目のプロポーズ』を見ていたといい、再放送を含めて3回も楽しんだそうだ。北京で行った製作発表会見では「浅野温子さんはあこがれの女優の1人」とコメントしている。
その言葉に偽りがないのは本作を見れば一発で分かるだろう。浅野温子ほどではないものの折に触れて首をかしげていたし、クライマックスの結婚式ではナットの指輪を渡すシーンで浅野が演じた細かいしぐさをほぼ完璧に再現していた。これはぜひ劇場で確認してほしい。
当初、中国側からは行方不明になっていたイエ・シュンの婚約者役に日本人俳優を使いたいという要望があったという。だが、細貝さんはそれを必死に止めた。「中国で勝負する映画ですから、スタッフだけでなくキャストも全員中国人を起用すべきだと思ったんです。よくある日中合作スタイルではヒーローは日本人俳優、ヒロインは中国人女優というパターン。それぞれにリアリティが感じられる設定にすると、結局、中途半端なものになってしまいます」
その代わりに、原作へのリスペクトの意味も込めてオリジナルキャストを呼ぼうということになり、白羽の矢が立ったのが武田鉄矢のカメオ出演だった。イエ・シュンのチェロの師匠が、浅野温子が演じた矢吹薫だったという設定を入れることで、22年後の星野達郎が師匠の夫という立場で登場する。
「実は武田さんの登場シーン、役割と話の流れは書いておいたのですが、セリフは武田さん本人に星野達郎として書いてもらったのです。『武田節』を期待しましてね。そうしたら、武田さんからスカーフを小道具に使おうというアイデアが出てきました。セリフを翻訳するのではなく、日本語で演じていても視覚的に何をいわんとしているのかが一発で分かる。これは作家には書けないものでしたね」
細貝さんによると、現場は独特な緊張感に包まれ、監督に至っては「あのタケダテツヤが来る。自分に使いこなせるのか?」と恐縮しまくり。でも、撮影後には全スタッフによる記念写真攻めが始まり、日本語ができる台湾人スタッフが隙を見つけては繰り返し武田鉄矢に話しかけたとか。テレビで見る限り説教くさくて面倒な感じだが、本人は男気にあふれたフランクな人なのだ。
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