来てよその“日”を飛び越えて――今こそ、震災復興ツーリズムのススメ『あまちゃん』最終回記念(5/9 ページ)

» 2013年09月30日 12時40分 公開
[本橋ゆうこ,Business Media 誠]
誠ブログ

「食べて応援」の精神を胸に

 ちょうど筆者が旅をしていたころ、あまちゃんは震災編を放送しており、リアルの世界の日本では西日本に台風が接近していた。そのため日本列島全体の上空で大気が不安定になり、関東では埼玉や栃木などで大規模な竜巻被害に見舞われていた。そんな中、ひたすら次の経由地を目指して列車に揺られる道中で、盛岡から海側を目指す途上の車窓を流れる景色は、まるで「もののけ姫」でも登場してきそうな、もやに霞んだ山また山の連続だった。墨絵のような色合いはゾクゾクしてくるほどの深山幽谷っぷりというか、雨が窓ガラスを叩き付ける曇天も相まって、なんだか事件の一つも起こりそうである。

 そんな景色を眺めながらディーゼル列車の車中で食べる駅弁。美味いに決まっているじゃないか。これぞ旅の醍醐味!(ちょっとディーゼルエンジンくさいが気にしない)……というわけで、仙台からの牛タン弁当に引き続き、東北を「食べて応援」するための駅弁タイムだ。

 この日食べていた、豪華すぎる駅弁の写真はこちら。お分かりいただけるだろうか、この「旨そうなもの、片っ端から入れました」とばかりの盛り過ぎ感! 久慈市小袖海岸の荒波をイメージしたというこの弁当は、エビ、サケ、カニ、ウニ、ロコ貝、いくら、ホタテ、パナ貝、ニシンのマリネなどの海産物が山盛りなのに1200円とは、フタにあまちゃん印がついているにしたって、信じられないほどの過剰サービスである。いや美味しかったですが! お得感ありすぎて申し訳なくなるほど、ウニとかカニとか美味しかったですが!

 そうなのだ。こっちへ来てから、寿司を食べた翌日に、また寿司(回るやつ)を食べていたりする。こんなこと全く地元の北関東では考えられないが、そうさせてしまうのが、漁港近くの魚めいた雰囲気というものである。極めてダイエット向きではない。ちなみに三陸周辺は、海側から内陸の平野部へ一歩入れば、何も知らない関東者がビックリするほどの「米どころ」。だから当然、ご飯もとても美味しい。

 ちょうど石巻で泊まっていたビジネスホテルの真正面が、地元の人が行くような回転寿司のお店だった。聞くところによると、ここは地元産の新鮮な魚介を扱うリーズナブルな回転寿司チェーン(参照リンク)で、あの震災の当時もいちはやく営業を再開し、まともな食事など期待できない覚悟で駆けつけていた報道関係者たちにとって毎日のささやかな憩いの場になっていたのだという。これを書いている今も、活気のある店内で味わった寿司ネタの美味しさは忘れられないが、誰も彼もが身心共に疲れ果てていたであろう震災当時には、それはどれほど大事な時間だっただろうか。

 温かかったり、新鮮だったり。食べごろにするために人の手が感じられたりする美味しい料理というのは、それだけでもう人間の中の何かを癒すパワーがある。

まめぶも盛岡冷麺も食べました

 ところで、盛岡駅構内のちょっとこぎれいなそば屋で毎日限定20食という「まめぶ汁」を食べてみて、なるほど微妙なりにけっこう美味しかったのだが、あの「まめぶ汁」、ほんとは地元の方々はそもそもアレの存在を知らなかった、という話(参照リンク)にはたいそうビックリさせられた。(割といい話だが。)

 ……と、ここで思い出したように、写真は盛岡で食べた冷麺。特に調べず入ったお店だったけど、こちらも大変美味しかったです。