『半沢直樹』の世界、外国人に英語で説明するには何といえばいい?ビジネス英語の歩き方(3/3 ページ)

» 2013年09月26日 07時00分 公開
[河口鴻三,Business Media 誠]
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日本独自の雇用形態「出向」は……?

 これと同じく「出向」という概念も、欧米のビジネス界にはまず存在しません。最近、日本マクドナルドの社長にカナダ人女性が赴任して話題になりましたが、このような同一企業グループ内の現地法人に一定期間赴任することは欧米企業でもあります。ですが、銀行が取引先に社員を出向させるなどということはあり得ません。

 オンライン辞書でも、「job assignment system」とか、「temporary transfer」と無理やりの英語化を試みているところもありますが、いずれも見当ハズレです。というのも、『半沢直樹』にも出てくるように、本籍は元の会社に残しておき、給料の多く(あるいはすべて)をそこからもらい続け、仕事だけは出向先でやるというのが日本の出向です。

 日本語で厳密にいう場合、在籍出向と転籍出向があるといわれますが、多くは在籍出向です。欧米では「会社を変わること=給料が増えたり減ったりするのが普通」という感覚があるので、あえて出向などという半端なやり方は、まず存在しないわけです。

 日本独自の合意形成システムである「根回し」が「Nemawashi」として英語の中に入り込んだように、出向も「Shukko」として英語化したほうがいいように思います。滝川クリステルさんの「オ・モ・テ・ナ・シ」と一緒ですね。

 『半沢直樹』に出てくる、日本のサラリーマン社会のパワーポリティクス。なかなか英語にならないなら、いっそそのまま「倍返し」で英語の中に入れてしまうというのも手かもしれません。

 そうそう、決めゼリフの「倍返し」にはいろいろな言い回しが考えられますが、ウォール・ストリート・ジャーナルでは「Take Double the Payback」という訳を与えていました(参照リンク)

著者プロフィール:河口鴻三(かわぐち・こうぞう)

河口鴻三

1947年、山梨県生まれ。一橋大学社会学部卒業、スタンフォード大学コミュニケーション学部修士課程修了。日本と米国で、出版に従事。カリフォルニアとニューヨークに合計12年滞在。講談社アメリカ副社長として『Having Our Say』など240冊の英文書を刊行。2000年に帰国。現在は、外資系経営コンサルティング会社でマーケティング担当プリンシパル。異文化経営学会、日本エッセイストクラブ会員。

主な著書に『和製英語が役に立つ』(文春新書)、『外資で働くためのキャリアアップ英語術』(日本経済新聞社)がある。


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