それともう1つ、『許されざる者』には最近の映画では珍しい取り組みがある。それは「製作委員会」方式を使っていないことだ。ともすれば億単位の投資となる映画製作、万が一、コケたときのリスク分散のために複数社が出資し合うのが製作委員会方式だが、映画から得られる収益もシェアされる。ワーナー日本法人がすべての製作費用をまかなったということは、大ヒット間違いなしという自信の表れなのだろうか?
「いえいえ、そういうことではありませんよ(笑) 先ほども申し上げたとおり、この作品はワーナー・ブラザースの大きな資産、クラウンジュエル(王冠の宝石)なのです。だからこそ、製作すべてをワーナー日本法人がやるべきであると判断したのです。それ以外の意図はありませんよ」
実は、ワーナー日本法人が邦画を作ったのはこの作品が初めてではない。本格的な邦画製作となると2010年公開の『最後の忠臣蔵』からとなるが、それ以前にも邦画配給などを手掛けている。これはローカル プロダクション戦略といい、現地法人が独自に、その国の文化に合った、ヒットが見込める映画に積極的にかかわっていくというものだ。
これまでに同社は『デスノート』シリーズ、北野武監督の『アウトレイジ』シリーズ、『おっぱいバレー』『るろうに剣心』『パラダイス・キス』などのヒット作品の共同製作や配給を行った。アニメ映画でも『銀魂』シリーズや『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊2.0』『サマーウォーズ』『スカイ・クロラ The Sky Crawlers』の配給を担当するなど、名前を挙げればきりがない。
なぜローカル プロダクションにこれほど注力するのだろうか? それは、近年の日本映画市場が邦高洋低になっているからだ。『テッド』『レ・ミゼラブル』というヒット作があったものの日本のマーケットは邦画中心。だからアイアトン社長は「マーケットニーズに合わせて邦画に投資することは正しい」という。
確かに「全米が泣いた!」はずのハリウッド大作が日本ではヒットしないなど、日本市場は難しい。例えば、この夏、ワーナー日本法人は2本の洋画と1本の邦画を展開している。『劇場版銀魂完結篇 万事屋よ永遠なれ』の興行収入がおよそ17億円なのに対して、期待の『マン・オブ・スティール』(北米で3億ドル)は12億円台。ところが、北米では微妙だった『パシフィック・リム』(同1億ドル)がそれを上回り約16億円と好調だとか。アイアトン社長は「やはり日本のマーケットは読みづらい……」とコメントする。
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