なでしこジャパン、はだしのゲン。誰にでも社会は変えられる――日本に上陸した署名サイトの狙いとは?これからの働き方、新時代のリーダー(後編)(2/6 ページ)

» 2013年09月25日 08時00分 公開
[吉岡綾乃,Business Media 誠]

吉岡: 何か、ユーザー数が増えるきっかけとなるできごとがあったのでしょうか?

Emmy: まず2012年8月に、「なでしこジャパンのロンドン五輪からの帰国時は男女平等に対応して頂きたい!」(参照リンク)というキャンペーン。これは、日本代表がロンドンオリンピックに出場したとき、男子代表は移動のフライトがビジネスクラスだったのですが、女子代表(なでしこジャパン)はエコノミークラスだったんです。帰りのきっぷは男女平等に取り扱ってほしい、というキャンペーンで、2万人以上の賛同者が集まり、成功しました。

ロンドン五輪のとき、現地へ向かう飛行機がエコノミークラスだった「なでしこジャパン」。 帰りの切符は男女平等に取り扱ってほしいと言うキャンペーンに対し、2週間で2万人以上の賛同者からの署名が集まり、英紙ガーディアンなど世界各国のメディアに取り上げられた

吉岡: 2012年8月というと、Change.orgの日本版がスタートしたすぐ後ですね。Change.orgのキャンペーンって、実は硬軟いろいろあるんですよね。特に印象に残っているキャンペーンはありますか?

Emmy: 北海道大学でジンパ復活を! (参照リンク)、というキャンペーンがありまして。

吉岡: ジンパ……?

Emmy: はい(笑)。ジンパ、とはジンギスカンパーティーの略です。北海道大学では、ジンギスカンパーティーが長年親しまれてきた伝統で、北海道の寒い冬をみんなでジンギスカンを食べながら乗り越えていこう! という気持ちが詰まっている習慣だそうです。今回のキャンペーンは正確に言うと、北海道大学構内で、ジンギスカンパーティーをしていたレクリエーションエリアが廃止になることになったのですが、その決断を撤回してほしい、という内容ですね。1500人以上の署名が集まりました。ローカルで自分の文化を守りたい、食文化を守りたい、といういかにも日本人らしいキャンペーンはいいですよね。

 あとはまだ現在進行形ですが、やはり『はだしのゲン』ですね。7日で2万人以上の署名が集まって、あんなに展開が速いとは……と私たちも驚いています。樋口徹さんという、大阪で学童保育指導員をしている方が立てたキャンペーンです。

吉岡: 『はだしのゲン』については、展開の速さもそうなんですが、ネットで起きたこの署名キャンペーンがネット上で記事になり、新聞やテレビといったマスコミが取り上げることで、さらにネットメディアに記事が出て……という盛り上がり方でした。ネットとリアルの間をボールが往復するような形で大きな話題になっていくのが、すごくイマドキで面白いな、と。

Emmy: 確かに。ネット上で集まった2万人の署名を、樋口さんが松江市の教育委員長に直接持っていったのが、ちょうど今週の月曜日のことです(編注:インタビューは8月末に行われた)。オンラインで始まってオフラインへ一歩進んだ事例が日本でもできたと言えると思います。

松江市教育委員会に対し、『はだしのゲン』を小中学校図書館で子どもたちが自由に読めるように戻してほしい、というキャンペーン

吉岡: Emmyさんが当初思っていたよりも、順調に進んでいるんじゃないですか?

Emmy: そうですね。去年(2012年)の梅雨に日本に来て準備を始めたとお話ししましたが、当時はChange.orgの話をすると、「そんなの無理だ」「日本では署名サイトなんてうまくいくわけがない」「ネットで騒いでも日本は変わらない」とみんなに口々に言われて……あの頃は私、大分落ち込んでました。でも、こうしてひとつひとつキャンペーンが成功していくのを見ていくと、ネットで騒いでいるだけじゃ意味がない、なんていうことはないんだと思います。

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