街の“資源”を使って何が生まれたのか? まずは「そば」、そしてこれからの働き方、新時代のリーダー(後編)(6/6 ページ)

» 2013年09月20日 08時03分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]
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企画書の中にも工夫

土肥:地元活性化のプロジェクトに携われて、何か学んだことってありますか?

甲斐:市民大学を実現させるためには、多くの人を説得しなければいけません。そのために企画書などを書いてきたのですが、改めて“言葉の力”って大切だなと思いました。

土肥:ほー、意外ですね。甲斐さんは言葉に関係する仕事をされてきたので、それは重々理解されているのかと思っていましたが。

甲斐:企画書の中にも工夫を凝らしているんですよ。どのような言葉を選んだら、みんなは楽しくなるのか、といったことを考えています。なぜそんなことをしているかというと、楽しく伝えないと人ってなかなか動かないんですよね。

土肥:「おりひめ大学」の小冊子を見ているのですが、ユニークな表現がちらばっていますね。例えば、学生を募集する際、普通だったら「男女共学」と書きます。でも小冊子には「老若男女(ろうにゃくなんにょ)共学」と書かれている。「すべての市民が対象ですよ」というメッセージの中に、おもしろさが加わっていますね。

甲斐:ありがとうございます。

土肥:最後に、甲斐さんにひとつお願いが。

甲斐:なんでしょう?

土肥:このインタビューで、甲斐さんの口から何度も「地域活性化」という言葉がでてきました。個人的にこの言葉がしっくりこないんですよ。使い古されているというか、地味なイメージがあって……。そこでこの言葉に替わるものをつくっていただけないでしょうか?

甲斐:おー、それは興味深いですね。

土肥:若い人でも「自分が住んでいる街で何かをしたい」と思っている人は多いはず。そんな人たちに「おもしろそー」と感じられるような表現を。

甲斐:少しお時間をいただけますか? 「地域活性化」「地域貢献」といった言葉に替わるものを考えてみますね。

土肥:ぜひ、ぜひ。

(終わり)

取材メモ:

 これからの働き方とは何か? そう聞かれても、ひとことで答えるのは難しい。ただ今回紹介した甲斐さんの働き方は、私たちに新しい形を示してくれた。彼の本業はクリエイティブディレクター。多くの人が目にしたことがある広告を手がける一方で、生まれ育った街への貢献も忘れていない。これまでにない市民大学を立ち上げ、そこで総合プロデューサーを務めている。

 多くのビジネスパーソンは会社の中の“頂”を目指して歩いている。それは出世であったり、給与だったり、人によって違う。甲斐さんの場合は、本業の外に2つめの頂を見つけ、それに向かって歩き始めた。数年後、彼はどこまで登りつめているのだろうか。ひょっとしたら、全国の自治体が注目するところに立っているかもしれない。


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