吉岡: "Change"をキーワードに、バラク・オバマが大統領選に勝利した2008年の選挙ですね。若い人たちがたくさん選挙キャンペーンに参加していると、日本でもとても話題になりました。Emmyさんもその中にいた一人だったんですね。もともと政治に興味があったんですか?
Emmy: 全然(笑)。政治とか選挙とか、ボランティアとかにもまったく興味がなかったし、関係がない生き方をしていたのに、このとき初めて一人の政治家に心を奪われるという体験をして……「なんて格好いいんだこの人は!」と思ったんです。その後、シアトルからニューヨークへ引っ越した頃からオバマの選挙ボランティアをすることになりました。
吉岡: 日本から見ていると、それがすっごく不思議なんです。政治に接点がない人がなぜ選挙ボランティア? って。あのキャンペーンに参加した若い人たちは、みんな「オバマ素敵!」と思ってたのでしょうか?
Emmy: うーん……そういう人と「友達に誘われたから」という人が半々くらいだったんじゃないでしょうか。もちろんオバマが強いメッセージを持っていたことも大きいですが、非常にソーシャルな面が強かったとも思います。
今振り返ると非常に上手だったと思うのは、選挙をしている人が「参加してください」とお願いするのではなく、すでに選挙キャンペーンに参加している人が「一緒にやろうよ、楽しいよ」って友達を誘うんですよね。友達に声をかけやすいイベントがたくさん用意されているんです。例えば、週末にニューヨークからペンシルバニアへ、みんなでバスにのってワイワイ出かけてドアノッキング、とか。そこでまた新しい友達と知り合って、「また次の週末会おうね!」っていう感じで、ソーシャルに広がっていくんです。
吉岡: え、ちょっと待って下さい。ドアノッキングって、知らない街に行って、知らない人の家のドアをノックするんですか?
Emmy: はい。日本と違うのは、この地域は共和党支持、この地域は民主党支持、というのが事前に分かっていて、パブリックデータとして公開されているんですね。キャンペーン事務局はそれをデータ分析して、リストを作ります。ボランティアは、有権者の住所と電話番号のリストと地図を渡されて、「オバマのボランティアです。ちょっとお時間いただけませんか?」って言いながら、一軒一軒ドアをノックして周るんです。
吉岡: ホントにドアノックなんですね……。そんな風にボランティアが家を周って、話を聞いてもらえるものなんですか?
Emmy: まあ10軒中9軒くらいは、ドアをバーンと閉められて「迷惑行為だ!」で終わっちゃいます(笑)。でも10%くらい、話を聞いてくださる方がいるんですね。そうしたら、「私はなぜオバマを応援しているのか」といった非常にパーソナルなところから話を始めて、オバマの政策とか、選挙の話とかをしていきます。政策について話さなくてはいけないときはパンフレットを渡すとか、そのあたりの準備は非常にしっかりされているのでやりやすい。これを1日に8時間くらいやるんです。
吉岡: ええー、8時間! Emmyさん、やってて疑問を感じることとか、なかったんですか?
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