バイトテロと「自分らしく生きる」ことの近くも遠くもない関係サカタカツミ「就活・転職のフシギ発見!」(2/3 ページ)

» 2013年09月16日 03時47分 公開
[サカタカツミ,Business Media 誠]

相手の立場になれない就活生が憤慨する理由

 まずは就活生の場合。面接などの受け答えが上手くいかないので相談に乗ってほしいという就活生に話を聞いてみると、自分の思いばかりが先走ってしまい、相手がいることを忘れてしまっているケースがよくあります。相手の質問をよく聞き、それに沿った話をするのが面接(というよりも会話そのもの)の基本ですが、それができないのです。

 「相手の話を聞いて、相手がどう考えるか、『相手の立場になって』考えてみて」と私がアドバイスしても、キョトンとした顔をして意味が分からないと困惑の表情を浮かべます。そして、ビックリするくらいキッパリと「それは無理です」というのです。

 どうして無理なのか、と訊ねると「私は面接官の経験がないので、面接官の気持ちになれ、というのは無理です。できるわけがない。社会人でもないので、社会人としての常識で推し量れ、相手の立場になって考えろといわれても、どうしていいのか分かりません」と。同様の話は、就活の現場にはゴロゴロ転がっています。働いた経験がないので働くイメージができないから、意欲を示せといわれても無理、とか、志望動機を述べろといわれても、その会社でなにができるのかやったことがない仕事なので言えない……という感じ。

 面接で企業が「自由な服装でお越し下さい」と指定しているケースでも「どんな格好がいいのか、よく分からない」とぼやきます。いや、相手が不愉快に感じない、ビジネスの現場にもマッチする服装ならいいと思うよとアドバイスをしても「自分は相手とは違うし、不愉快のラインも人それぞれだから、相手のことを考えてといっても、外しそう。決めてくれればいい」と、こちらが(いろんな意味で)ほう、なるほどねぇと感心させられる切り返しをしてくる就活生もいるのです。

「自分と相手とは違う」「迷惑は自分にはかからない」

 若手社会人たちの間にも同様の話はたくさんあります。例えば、退職したいと相談されたケース。「退職したいので退職願いを出して、即有給休暇を消化したい。2週間後には退職したい」という相手に、「いや、ちょっと待って。法律上問題はないと思うけど、会社は困ると思うよ。上司も同僚も仕事が回らなくなるかもしれない。相手の立場を考えると、もう少し……」と私が言いかけると、それをさえぎるように「相手の立場なんて言われても困る。そもそも相手が困っても私は困らないし、第一、もう辞めるのだから職場が困っても、私には問題ない」などとまくしたてるのです。

 また、上司に対する不満から転職を考えているという相談を受けたケースもあります。よくよく話を聞いていると、それこそ「上司の立場になって考えれば、自分にも非があることが分かる」こともよくあるのですが、それを伝えてもまるで耳を貸さないのです。最初は、自分が否定されること、つまり自分にも非があることを認めたくないから「分かっていて」そういう態度を取るのかなと思っていたのですが、どうやらそうでもなく「本当に分からない」様子。

 厄介なことに、同様の経験をしたのは1度や2度ではなく、それほどレアな感じでもない。これを読んでいる皆さんの中にも「ああ、そういえば、あの人はそんな感じだったな」と思い当たるケースも少なくないでしょう。

 気になったので、試しにネットで検索してみました。「相手の立場」というワードで検索してみると、たくさん出てきます。多くは「相手の立場になることはとても重要、ただ、相手の立場になるのは難しい。なぜなら相手は自分ではないから」と、身もフタもない話から、相手の立場になるためのノウハウがレクチャーされています。そう考えると、今に始まった新しい悩みでもなんでもなく、ごくありふれた問題だともいえそうです。Googleの「『相手の立場に立つ』に関連する検索キーワード」を見ていると、「自己PR」と「相手の立場」という言葉が掛け合わせで検索されていますから、就活や転職領域で仕事をしている私が、そういうある種の困った人をよく見かけるというのも、不思議ではないのかもしれません。

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