ローカル線を救うのは誰か? アニメファンを無視してはいけない杉山淳一の時事日想(3/5 ページ)

» 2013年09月13日 08時05分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

「聖地訪問」するアニメファンが乗客に

 アニメやゲームのキャラクターと鉄道会社とのコラボレーションは今までもあった。子どもたちに人気の『ポケットモンスター』は東京モノレールなどでラッピングトレインが走っているし、JR東日本は釜石線で『ポケモンウィズユートレイン』を運行している。『銀河鉄道999』や『きかんしゃトーマス』も採用事例が多い。これらの事例は、キャラクターの強い人気に、鉄道会社があやかるという形だ。

 しかし、のと鉄道の場合は「子どもたちに人気のアニメ」ではなく「アニメファンの消費行動の深さ」で成功している。物語のターゲットはハイティーンから大人。多くのアニメファンは好きな作品があれば関連商品を買うし、「聖地訪問」といって、物語の舞台を旅する。実写のドラマや映画のロケ地を訪問する旅と同様だ。鉄道が舞台となれば列車に乗ってくれる。

 実写作品に比べて、アニメの場合は登場人物のラッピングトレインで作品をアピールしやすい。実写作品の俳優は他の作品にも出るから、時期が過ぎると俳優と作品との関係が希薄になる。しかしアニメの登場人物はその作品に唯一無二の存在だ。登場人物のラッピングトレインをつくれば、それが物語や物語の舞台を想起させる。訪れた「聖地」では、アニメに描かれた景色が、実際の景色をどれだけ再現しているか、その正確さや差異を楽しめる。「聖地訪問」はローカル線の観光客誘致の重要なキーワードとなっている。

 他の事例を調べてみたところ、18の鉄道会社が15のアニメタイトルとコラボレーションしていた。

地元が舞台のアニメとタイアップする主な鉄道会社

 恥ずかしながら、筆者はどのアニメも見たことがない。この機会に拝見して、鉄道がどう描かれているか、アニメファンとは逆の視点で楽しもうと思う。鉄道をきっかけにアニメを知る人もいれば、アニメをきっかけに鉄道に親しむ人もいて、趣味の相互乗り入れが起きているかもしれない。

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