シリアは化学兵器を差し出すのか? それでも内戦は終わらない藤田正美の時事日想(2/3 ページ)

» 2013年09月11日 06時00分 公開
[藤田正美,Business Media 誠]

 シリア攻撃について国民の支持が得られず、オバマ大統領にとっては苦しい戦いになっていただけに、内心はホッとしているのかもしれない。もともとオバマ大統領が誕生した背景には、アフガニスタンやイラクでの「厭戦気分」があった。とりわけイラクでは米軍の撤兵を実現すると表明して2008年の大統領選挙に勝った(その前の予備選ではイラク戦争に始めから反対していたのは候補者の中で自分だけだとも主張した)。

 国民の中にまだ厭戦気分が強いのも確かだ。ある世論調査ではシリア攻撃を支持する人は3割、反対する人が5割以上いる。それにこの攻撃が長期にわたる軍事的介入につながると考える人も6割以上いるし、化学兵器の使用を止めさせる効果的な手段にはならないと考える人が約5割はいる。しかも米国がシリアの内戦に介入すれば21世紀入ってから3度目のイスラム圏での戦争になる。しかしこれまでの戦争(アフガニスタン、イラクでの戦争)が、米国の払った代償に引き合うと考えている人は少ないはずだ。

 オバマ大統領は、内戦そのものに介入する気はない。化学兵器を使用したことに対する懲罰をアサド政権に与えたいだけだ。だから地上軍を派遣するつもりもないし、長引かせるつもりもない。さらにシリア軍の施設を攻撃することで、現在のシリア軍と反政府軍との力のバランスを大きく変えるつもりもない。あえて言えば、若干優勢な政府軍を弱めて、双方が内戦停止の交渉のテーブルにつくよう仕向けるというのが隠れた目的である。

 しかしそれは綱渡りのような話だ。米軍の攻撃が政府軍を弱めることにつながるのは確実だ。それはオバマ大統領の本来の目的ではない。そうなったらロシアや中国のような親アサド政権の国はどう動くだろうか。もちろんベイルートやそこを本拠とするヒズボラ、そしてイスラエルの関係がいっそう緊張することは目に見えている。そして中東でも、アサド政権への攻撃を支持するサウジアラビアやトルコはどう動くのか。

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