人を恨み続けてしまった人が死ぬときに後悔する34のリスト(2/2 ページ)

» 2013年09月11日 07時00分 公開
[川嶋朗,Business Media 誠]
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内観療法で、父親への思いが少し変わった

book 『医者が教える 人が死ぬときに後悔する34のリスト』(アスコム)

 家族や親しかった人への恨みは根が深く、修復がむずかしくなってしまうことも多々あります。

 それでも、その恨んでいる人が、今まさに死の床にいるとして「それでもあなたは許せないですか」と聞いてみると、「許せる」となるケースが意外にあるものです。その人が死んでいなくなると思うと「許せる」のなら、そのことを想像してみるのも、恨みや悔いを消す方法の1つになるのではないでしょうか。

 私は内観療法を学んだ際に「自分の父親を許そうかな」と思うようになりました。

 私は幼いころ、母のすすめで児童劇団に入り、テレビの連続ドラマの主役の仕事もしたことがあります。

 売れた子役の家は家庭内崩壊しているケースが少なくないそうです。妻が子どもの撮影現場についていくので留守がちになり、夫婦の間に亀裂が生じてしまうためです。私が中学生のころから父と母は喧嘩が絶えなくなり、母はリウマチに悩まされるようになりました。ストレスが原因ではないかと思います。

 母は私が大学を卒業する間際に亡くなっていますが、それより前に、父は心の隙間を埋めようとしたのか、外に女性をつくり働かなくなって、何年かは収入がまったくなかったはずです。母の死後、借金まであったことが分かりました。

 大学時代に父と口論をした際は「アルバイトして授業料も払えるし、自活もできる。今さら父親面するな」と本気で言っていました。結婚してからも妻には「親父のことは、許してないからね」と言っていたのです。父は今でも健在です。

 父とはそのような親子関係でしたが、内観療法を学ぶようになり、許せなかった父へのわだかまりを自分で診てみることで、父への思いが少し変わりました。

死を想定して逆算する

 内観療法は日本発の精神療法です。内観療法では、わだかまっている人が、死ぬところを想像させます。一種のイメージ療法です。

 私も父の死ぬ瞬間を思い浮かべ、それでも父を許せないかを自分に問いかけてみました。すると不思議なことに「もう分かったよ。許すよ」と言ってあげたい気持ちになったのです。

 今は「もう恨んじゃいない。いいおじいちゃんとして感謝しているよ」と言っています。

 死を想定することが、積年の恨みを消す可能性があることを実体験として持ったことで、医師としての意識も変わりました。

 人の死には多かれ少なかれ悔いが残るものです。死を想定して、そこから逆算して悔いが残らないように生きていけば、恨みも悔いも消すことができるだろうという考えが、今の私の治療方針を形づくっているのです。


(次回は「生きているうちに“ごめんなさい”と言えなかった」について)

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