仕事で他の人に差を付けるには? 池上流「選挙特番の作り方」――池上彰×吉岡綾乃(後編)これからの働き方、新時代のリーダー(5/6 ページ)

» 2013年09月09日 07時30分 公開
[嶺竜一,Business Media 誠]

池上彰流、「選挙番組の作り方」

7月21日に放送されたテレビ東京「池上彰の参院選ライブ」は、同日の各局選挙特番の中で最も高い視聴率を獲得。当選者への鋭い質問や自民党の小泉進次郎議員への密着取材、公明党と創価学会の関係など政治のタブーに切り込んだとネットでも大きな話題になった

吉岡: ずいぶん鋭い質問をされていましたが、あれはやはりテレビ東京だからできたのでしょうか。

池上: まあ、そうですよね。去年の暮れの衆議院選挙の時にはNHK以外の全局から、選挙特番に出てくださいというオファーがありました。でもそれぞれの番組にはメインのキャスターがいるので、私はその横にいるコメンテーターになってしまいますよね。テレビ東京だけは私がメインだったから、好き放題やれたという部分はありますよね。

 他の局のメインキャスターは毎日ニュースを報じているから、どうしてもこの政治家と関係が悪くなりたくないという思いがどこかに出るでしょう。私は別にいいんです。どこかの局に出入り禁止になっても構わないので。

吉岡: さすが池上さん。番組の最初から候補者インタビューでガンガン攻めていったのは、出口調査から番組開始早々に当確が出るというのが分かっていたからこそのことだったんですね。

池上: そうです。他局が速報一本やりの時間帯にインタビューをやったら差がつけられるでしょう。インタビューは事前に、テレビ局から候補者や政党に申し込んでおくんです。でも他局は8時台はみんな速報で、候補者や政党インタビューは9時台、10時台に申し込んでいた。テレビ東京だけが8時台に申し込んだので、空いていたんですよ。

吉岡: 番組始まってすぐ、1人目のインタビューはアントニオ猪木さんでしたね(参照記事)

池上: そうです。インパクトがあるでしょ。アントニオ猪木さんに何を聞こうかと会議をしたときに、私が「彼のプロレスの得意技は何だったの?」とスタッフに聞いたら、「それは延髄斬りですよ。前の選挙の時には、『消費税に延髄斬り』って言ってましたから」と言うんです。それで私は、「そうか、消費税に反対って言っていたんだ。あれ、待てよ、日本維新の会は消費税増税容認だぞ。よーし、それを聞こう」と、スタッフとのやりとりの中で出てきた。それできっと、彼は何にも考えてないんじゃないかって予想して、突っ込んでみたらその通りだった。8時台の早い時間の一発目でしょ。「よし、これでつかみは成功だ!」と。それに小泉進次郎さんのインタビューも成功していたので、それを流して、彼について解説したらみんな見てもらえるだろう、とね。

吉岡: 選挙番組って、どれくらい台本が決まっているものなのでしょう? タイムスケジュールはその場その場で大幅に変わったりするのですか。

池上: タイムスケジュールは前の日には一応決まっていますが、当日になって当選確実が出るはずが出なかったり、当選確実が出たらすぐインタビューしますよって約束していた丸川珠代さんのように突然逃げちゃったりすると、予定が大幅に変わったりして大変なんですけどね。いきなり「次はこの人です」って言われて「ええー、どうしよう」みたいな(苦笑)。生放送ですから。

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