なぜシリアは空爆されるのか? 日本よ、本当の外交に目覚めろ伊吹太歩の時事日想(1/4 ページ)

» 2013年09月05日 06時45分 公開
[伊吹太歩,Business Media 誠]

著者プロフィール:伊吹太歩

出版社勤務後、世界のカルチャーから政治、エンタメまで幅広く取材、夕刊紙を中心に週刊誌「週刊現代」「週刊ポスト」「アサヒ芸能」などで活躍するライター。翻訳・編集にも携わる。世界を旅して現地人との親睦を深めた経験から、世界的なニュースで生の声を直接拾いながら読者に伝えることを信条としている。


安倍晋三 安倍首相は「シリア情勢の悪化の責任は、人道状況の悪化を顧みないアサド政権にあることは明らか」と言い切った

 ここ最近、世界のトップニュースはやはりシリアだろう。大量破壊兵器である化学兵器を使ったとして米国が軍事介入することになりそうだからだ。中東の安定の鍵を握るシリアを親米国家にしたいとずっと考えてきた米国。オバマ大統領は9月1日、9日から再開する米議会の承認を得た上でシリアを空爆すると発表した。

 すると安倍晋三首相はすぐにこうコメントした。「米国をはじめ国際社会としっかり連携を取りながら(シリア情勢が)少しでも改善していくよう対応していきたい」(参照リンク)

 この言葉を額面通りに受け取るなら、日本は米国の対シリア武力行使には関知しないことになる。なぜなら、国際社会は武力行使に関わらないからだ。

結局、安倍首相は米国の武力行使を支持するだろう

 国連は決して武力行使にゴーサインを出さないし(ロシアと中国が反対するから)、米国が一緒に攻撃すると考えていた英国は議会が武力介入を否決した。ドイツも米国に協力しない。唯一フランスは米国に協力する可能性がある(ただフランス世論は大反対しているのでどうなるかまだ分からない)。

 結局は米国がほぼ単独に近い形で、シリアを攻撃することになりそうだ(米大手メディアには、議会に判断を委ねるのはギャンブルだとする向きもある)。国際社会は不在になるので、安倍首相も武力行使を支持しない方向に傾く……なんてことになるはずもなく、結局、米国寄りの安倍首相は最後には「米国の決断を支持する」、つまり「武力行使を支持する」ということになるだろう。

 とにかくまたしても米国が単独主義で突っ走る可能性が高い。だが日本はそろそろ、米国の根拠の乏しい「武力行使」に対して冷静に反応し、日本しかできない外交で違った存在感を示すべきではないだろうか。

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