――まずデザイナーが絵を描く、コンセプトを具現化する、というのはすごく面白いですね。以前から思っていたことなのですが、エンジニアって頭がいい人が多いじゃないですか。そういう人が作るものは、多機能だけど複雑で、理屈っぽいものになりやすい。でも使う人は賢い人だけじゃなく、普通の人に支持されないと人気は出ませんよね。LINEは「普通の人に使いやすい」サービスだな、と。
森川: それはありますね。エンジニアがリーダーシップを取って作ると、どうしても機能過多になりがちです。エンジニアはリテラシーが高いですから、標準と思うレベルも人より高いですし、自分が持っている技術や新しい技術を盛り込みたいと、どうしても思ってしまうから。でも逆にデザイナーというのは、機能を削るのが上手な人たちです。自分がどうかというよりは相手がどう考えるか、使いやすいものを考えるのもうまい。
うちのように、リーダーシップをデザイナーが持っているという会社は、インターネットの世界ではほかにないですし、うちの強みとして強化している点です。強いて言えば、あとはAppleさんとかですよね。
――少人数チームで作る、デザイナーがリーダーシップを取る、という方針は森川さんが最初から打ち出していたものなのですか?
森川: いろいろ試すうちに「本当にいいものを出すためには、大事なのは人数じゃない。本当に優秀な人が、少人数でぶつかりながら作っていくほうが、結果としていいものができる」ということが分かってきたんです。それは、韓国でもそうやっているし、僕自身の考えでもあります。また、そういう優秀な人とか、こだわりがある人って管理されるのをいやがるんですよね。こういうモノづくりの考え方とか、組織づくりの方向性というのは、私の意思でもあるし、組織として収斂(しゅうれん)されてきている部分でもあります。
――ほかに、アプリ開発で意識している部分はありますか?
森川: あとは「細かく決めない」でしょうか。計画書を作らないんです。「こういうスケジュールで出して、ユーザーが何人になったら売上がこうで……だからこの時期に出さないと目標を達成できません」といった予定を立てない。いいものができたら出す、スケジュールを決めずに流動的にやっています。
「いつまでに出さなくてはいけない」ではなく「いいものができたら出す」という意識付けなので、これは裏返すと、作っている人からすると「いいものにならなければいつまでも出せない」ということになり、難しかったりもするのですが……。そこに関しては厳しくて、「最高のものを出せ」という話を常にしています。
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