リスクを取ることに、過度に臆病なサラリーマン年収1000万円の貧乏人(2/3 ページ)

» 2013年08月21日 07時00分 公開
[伊藤邦生,Business Media 誠]

金融機関のトレーダーでさえ、自分のお金を運用できない

book 『年収1000万円の貧乏人 年収300万円のお金持ち』(中経出版)

 大手金融機関で債券のトレーダーをしていた人でさえ、自分のお金を1%以上で運用する自信がないのです。おそらく、先輩にこのことを指摘すると「年間1%以上の運用利回りを出すのは簡単だよ」と反論するでしょう。確かに「年間1%程度の運用利回り」は難しくはありません。

 しかし、それ以上に万が一、投資がうまくいかず、自分のお金が減ってしまうことに耐えられないのだと思います。「毎月働いてコツコツと貯めたお金を、投資で失ってしまうかもしれない」というのは、先輩にとって精神的に苦痛だったのでしょう。

 また、トレーディングの部署には、こんな先輩もいました。部署のヘッドを任されていたこともある優秀な人で、順調に出世もしていました。その先輩と立ち話をしていたときに「投資で独立しようとか考えないのですか?」と聞いたことがあります。すると、その先輩は「投資をしても儲かるわけがないだろう。長年相場の仕事をしていて、そのことだけはしっかり学んだよ」と言っていました。

 投資をするうえでは「ある程度の優位性」をもったレベルまで到達しないと稼ぐことはできません。つまり、ほかの投資家よりも深い分析や正確な予測が必要となります。

 ただ、トレーディングの部署に数年間いると、ある程度の優位性ができてくるものです。それにもかかわらず、先輩からは先のような発言が出てくるのです。長年トレーディングの経験を積んできた人なので「そこまで慎重にならなくてもいいのではないか」と思ったものです。

エリートになればなるほど会社に従属したがる

 大企業で働いてきて感じたのは、多くの人が「保守的だ」ということです。しかもエリートほど過度に保守的です。「なぜ、そこまで保身に走るのだろう」と不思議に思います。しかし、私自身も同じような経歴をたどってきたので、ある程度は理解できる部分もあります。

 今までの人生は「いい大学に入って、いい会社に入って、定年まで頑張って働く」という価値観がスタンダードでした。だから、「今、大手企業で働き、安定した生活を送っている」ということが重要なのです。

 確かに大企業であるほど、経営は安定しているかもしれません。自分のやりたい仕事とは違くても、寄らば大樹の陰で、大きな組織で働いているほうが居心地がよいという気持ちも分かります。

 また、中高年の再就職が厳しい今のご時世では、大企業をクビになることは恐ろしく感じられるでしょう。だから、多くのサラリーマンが保守的になるのはしかたありません。

 しかし、本当にそこまで保守的になる必要があるのでしょうか。そこまでサラリーマンという地位は魅力的なのでしょうか。そんな時代だからこそ、サラリーマンが自分で「ゴールドリバー」をつくることに意味があるのではないでしょうか。

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