危険って……と口がアングリしてしまった方もいるかもしれないが、なにも“妄想”でこのような危険をあおっているわけではない。
かつてドラマや映画で「喫煙を美化」することで、喫煙者を増やすという時代がたしかにあった。
有名なのは、ハリウッドだ。『ランボー』や『ロッキー』でおなじみのシルベスター・スタローンは、映画のなかで、タバコを吸う見返りに、タバコ会社から1億2000万円のギャラを受けとった、と告白している。
ヒット映画の主人公に、タバコを吸わせる、コーラを飲ませる、スポーツカーに乗せる。このような手法で、観客の購買心をあおる。広告の世界では「プロダクト・プレイスメント」と呼ばれる、この手法でタバコはガツンと売り上げを伸ばしてきた、という歴史的事実がある。
この構造は、日本も変わらない。筆者が中学生の時、こっそり買ったタバコに火をつけた時、頭のなかでの自分の姿は完全に『あぶない刑事』のタカとユージだった。個人差はあれど、こういう子どもが日本中に大勢いるはずだ。
「憧れ」で買わせて、「イメージ」で売り上げを伸ばす――。
タバコほどスピンコントロール(情報操作)を駆使する業界はない。ご興味のある方は、それらをテーマにした『サンキュースモーキング』や『インサイダー』という映画を見ていただきたいが、現実世界でもメディアへの圧力も含めて、それは熾烈(しれつ)な情報戦が繰り広げられる。
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