飲食業では、食材費や人件費をそれぞれ売上の30%以内に抑え、食材費+人件費で60%程度にとどめておくことが経営の鉄則だそうです。
ワタミのような居酒屋チェーンで食事をすると、どこも驚くほど安いメニューです。切り詰められるところは切り詰めて、経営努力をしてその値段を実現しているはずです。
家計で考えてみましょう。お給料の総額が減った(=メニューの料金を下げる)とき、真っ先に削られるのは旦那や子供のお小遣い(=社員の人件費)ではないですか? 食費(=食材費)は多少下げられるかもしれませんが、家賃や光熱費などはなかなか減らせませんよね。
そう考えると、飲食業でも他店との価格競争に負けないためには、食材をケチるか安いが安心できない食材を使ったりします。また、人件費を減らすために個々のスタッフを少しでも長く働かせる努力をするのが自然です。
もちろん、そうした安易な方向に走らず、俺のフレンチなどで最近話題の俺の株式会社のように、別のアプローチで経営努力をするのがあるべき姿なのでしょう。ところが日本人の性なのか、こうした小さな改善を積み重ねて商品を良くする、値段を下げる方向の努力をすぐに始めてしまいがちです。ですから、飲食業でスタッフがつらい思いをする「ワタミ=ブラック企業」という批判を受けるのは、経営者の力量不足や怠慢という面は確かにあるものの、それは個々の企業の問題ではなく、業界の構造的な避けては通れない問題だというのが私の見解です。
私は過去に、ある飲食店オーナーさんのインタビュー記事を執筆したことがあります。その人も、飲食業界が若者にとって夢を持ちにくい、報われない業界になっているという問題意識を持っていました。ワタミがブラック企業というよりも、「飲食業=ブラック業界」と考えるべきだという意見の人は、一定数はいるのではないかと思います。
私の認識が正しければ、ワタミだけを批判していてもそれは枝葉末節でしかありません。幹や根にある業界としての問題に、目を向けるべきなのではないでしょうか。
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