少し前から「ブラック企業」問題についてあらためて報道されるようになり、さまざまな意見に触れる機会が増えてきました。私の立場は「ブラック企業ってよくないよね」というありきたりなものなのですが、そもそも世間で言うところの“ブラック企業”って何だろうかという観点で、問題提起しようと思います。
ネット百科事典の「コトバンク」によると、ブラック企業のことを
労働者を酷使・選別し、使い捨てにする企業
と、あります。
過酷な労働環境に置き、ノルマをこなせない社員にプレッシャーをかけ、退職に追い込んではまた新しい社員を採用する企業、といった感じでしょうか。ただ、中には「過酷な労働環境が待っている企業=ブラック企業」と解釈している人もいるように感じます。
一方、ブラック企業と同じ過酷な労働環境であっても、将来のことを考えると自分のためになる「ハードワーク企業」もあります。今回は、そんなハードワーク企業とブラック企業とを混同しないでほしい、というお話です。
1つ、例を挙げましょう。中途の人材紹介会社によく出入りする身としては、「プログラムの書けるエンジニアがいない」という話をよく聞きます。立派な大学を出て有名な大手SIer(※)で働いている自称エンジニアは、職務経歴書を見ると外注管理くらいしか経験がないことがまる分かりです。そんな人材は紹介先がほとんどない――というのが、人材紹介会社のあるある話です。
一方、激務で有名なSIerで働く社員は、コンサルティング・要件定義・設計・プログラミング・テストとすべてのプロセスを経験し、若いうちはとにかく自分でプログラムを書かせて社員を鍛えます。ちなみに、その会社名で検索すると、一時期は関連検索ワードに「○○(社名) ブラック」が含まれていました。
しっかりと休みが取れて「無理をしないで働ける」大手SIerで10年働いた社員と、激務で有名なSIerで「常に自分をストレッチさせ続けて」10年働いた社員。どちらが中途の転職マーケットで評価されるかというと、たいていの場合、後者の社員のほうが高く評価されます(もちろん、前者が評価されるケースもありますが)。
ただシステム業界には、真の意味での「ブラック企業」も多数存在するようです。
「自分の今やっている仕事が自分の成長につながっているのか」
「会社は自分の今後のキャリアのことを考えて、適切なプロジェクトやポジションを用意してくれているのか」
そうした視点を忘れてしまうと、「ハードワーク」でなく、ただ「むやみに働く」ことを求めているブラック企業に、いいように使われてしまいます。
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