麻生氏「ナチス発言」騒動の本質は、「ナチスの手口」を学ばないと分からない窪田順生の時事日想(3/4 ページ)

» 2013年08月06日 08時00分 公開
[窪田順生,Business Media 誠]

昔も今も「手口」は変わっていない

わが闘争(上)』(角川文庫)

 「喧噪」は人々から冷静な判断力を奪う。操られた大衆は、民族弾圧だって容認する。だから、マスコミの「喧噪」の中で憲法改正の議論をせず、静かにやろうやと麻生氏は言った。いろんな意見はあるだろうが、どう解釈しても「ハイルヒトラー」には聞こえない。むしろ、会場にいる鼻息の荒い「愛国者」をなだめているようにすら感じる。

 だが、ほとんどの日本人は、この言葉より、海外メディアや共同通信の記事を信じる。まさかマスコミが嘘をつくわけがない――。この現象を、極めて冷静に分析をした人がいる。ヒトラーだ。

 「素朴なために、人々は、小さな嘘よりも、デマ宣伝の犠牲になりやすいのだ」(『わが闘争』より)

 実際、「デマ宣伝」によって、素朴な人々が犠牲になるケースが後を絶たない。

 ピューリッツァー賞を受賞した高名な女性ジャーナリストが、『ニューヨークタイムズ』にイラクのフセインが大量破壊兵器を持って米国を潰そうとしている、という記事を書いた。

 国内外のメディアは大騒ぎ。愛する国と家族を守れ、という「喧噪」の中で、まともな議論などなさなれないうちに気がつけば戦争へと突入した。

 結果、米国の若者も大勢死んだし、のんびりと暮らしていたイラクの人々もたくさん犠牲になったが、戦争の目的だった大量破壊兵器などそもそも存在しなかった。

 やがて吊るし上げられた女性ジャーナリストは、副大統領側近などのリークをうのみにしただけで、裏取りもしていないと白状した。

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