JR東日本さん、その卸値、安くない? Suicaのビッグデータ騒動杉山淳一の時事日想(2/5 ページ)

» 2013年08月02日 08時47分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

Suicaの預り金は178億円以上

 私はそれらの報道を見聞きして、Suicaデータの是非はともかく、Suicaの発行枚数に驚いた。新聞報道などによると総発行枚数は約4300万枚という。JR東日本の2013年度決算説明会の資料をあたると、発行枚数は約4247万枚という数字が出た。このうち、クレジットカードの「ビュー・スイカ」カードの会員は約373万人。モバイルSuica登録会員数は約311万人。この2つを差し引くと、Suica乗車券とSuica定期券の発行枚数は約3563万枚となる。

Suicaの発行枚数は4000万枚を超える。このうち、クレジットカードタイプとモバイルSuicaは会費制のため預り金はない(出典:JR東日本Webサイト)

 利用者なら誰でも知っているように、IC乗車券を利用するには預り金(デポジット)が必要だ。Suicaは駅の多機能券売機やみどりの窓口で購入できる。支払額は2000円だ。このうち500円が預り金となる。乗車や買い物で使える金額は残りの1500円だ。Suicaカードは契約上、JR東日本が利用者に貸与している。「カードをお貸ししますから、保証金として500円を預かりますよ」という仕組みだ。

 利用者にとって500円は大した金額ではない。むしろ、いちいちきっぷを買う煩わしさから解放され、駅の売店やコンビニ、ホームにあるジュース自販機で使える便利さの対価としては安い。その安い500円も、3563万枚ぶんとなると、178億円になる。ビッグデータならぬビッグマネーだ。いや、ビッグマネーという呼び方はいろいろな場面で使われているからやめよう。ミクロデータ、マクロデータの考え方に照らし合わせて、利用者一人ひとりのミクロなお金の集合だから、“マクロマネー”と呼んでおこうか。

 それが178億円。これをメガバンクの普通預金に預けると、2013年7月現在の金利は0.02%だから、年間356万円生み出してくれる。

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