ブラック企業問題はなぜ「辞めればいいじゃん」で解決しないのか窪田順生の時事日想(1/4 ページ)

» 2013年07月30日 08時02分 公開
[窪田順生,Business Media 誠]

窪田順生氏のプロフィール:

1974年生まれ、学習院大学文学部卒業。在学中から、テレビ情報番組の制作に携わり、『フライデー』の取材記者として3年間活動。その後、朝日新聞、漫画誌編集長、実話紙編集長などを経て、現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌でルポを発表するかたわらで、報道対策アドバイザーとしても活動している。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。近著に『死体の経済学』(小学館101新書)、『スピンドクター “モミ消しのプロ”が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)がある。


 ここ数年、いわゆる「ブラック企業」にお勤めの方たちに取材をする機会がちょいちょいある。

 ビックリするような過重労働や、あまりにも酷いパワハラの実体験をうかがわせていただき、心から気の毒だなと感じる一方で、いつも不思議に思うことがある。

 「そんなに辛いなら、お辞めになったらいかがですか?」

 なんて質問をすると、だいたいみなさん一瞬凍りつくというか、ビミョーな空気になってしまうのだ。

 だいたい、「家族もいますし……」とか「辞めても、次がなかなか見つかりませんし……」という答えが返ってくるのだが、なかには「は? なに言ってんの」というオーラを漂わせ、明らかに気分を害されたようになる方も多い。

 このご時世、転職者が簡単に思うような職にありつけないことはよく知っている。家族もいればおいそれと会社を辞めることなどできるわけがないのも当然だ。

 とはいえ、心身を壊してしまったら元も子もない。

 精神的にも肉体的にもギリギリのところまで追いつめられているのだから、まずは緊急避難的にも「辞める」という道も検討もすべきではないか。なんて思うのだが、多くの方の頭にはそのような選択肢は浮かばない。

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