誰のせい? 参院選が盛り上がらなかった理由窪田順生の時事日想(2/3 ページ)

» 2013年07月23日 08時01分 公開
[窪田順生,Business Media 誠]

「選挙」というのは荒稼ぎできる“バブル”

 これまで、テレビや新聞にとって「選挙」というのはドカンと荒稼ぎできる“バブル”だった。

 政党CM、新聞広告にビラの印刷……選挙にまつわる広告費が一気にドバっと流れ込む。例えば、2009年の衆院選で自民党が支出した宣伝事業費は49億円、民主党は47億円。これに加えて、政見放送や、個々の候補者のビラやポスターなどの選挙公営費も含めると、数百億円が「媒体」としてのマスコミ各社に転がり込んできた。

 それが今回はガッツリ削られている。「ネット選挙対策」という名目でネット広告を売る会社や、なりすまし防止の認証サービスを売る会社といったIT企業にもカネが注ぎ込まれているからだ。

 面白くないのはそれだけではない。各党の政策、支持団体、候補者のプロフィール、そして情勢……これらの情報はすべてマスコミを介して、有権者に届けられてきた。「情報」を独占するということは「力」を握ることでもある。だから、ナベツネさんは安倍晋三首相を呼びつけたりすることができる。そんな既得権益が、Facebookだ、Twitterだというものに脅かされているのだ。

 こんな状態で、もし「ネット選挙」が盛り上がって、投票率もアップなんてことになると、長く「選挙ビジネス」を運営してきたテレビや新聞の面目は丸つぶれ。一気に存在感を失くす。これを防ぐには、江戸の鰻業界と同じ手法をとるしかない。

 江戸といえば、この時代の政治もいろいろ大変だった。鰻プロパガンダが行われるちょっと前、こんな落首(世相を批判した匿名の狂歌)が流行した。

 「田や沼やよごれた御世を改めて清くぞすめる白河の水」――。

 ご存じの人も多いと思うが、これは白河藩主の松平定信が行った「寛政の改革」を意味し、賄賂(わいろ)が横行した田沼意次の金権政治から、クリーンな政治へと移行したことをあらわすという。

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