ハローワークで“やりたいこと”を探してみたけどなかった、という話サカタカツミ「就活・転職のフシギ発見!」(4/4 ページ)

» 2013年07月22日 07時30分 公開
[サカタカツミ,Business Media 誠]
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この話の中に隠されている、キャリア教育の落とし穴とは

 さて、ニート君の話を聞いて、あなたはどう思いましたか。この話を採用担当者や就活生を支援しているという人たちにぶつけてみると反応は2つに分かれました。

(写真と本文は関係ありません)

 一つは「本気で仕事を探していない言い訳にすぎないのでは?」と話す人たち。仕事に就きたければ、選んでなんていられないはずだ、こういう言い訳をして、正社員になること自体を拒んでいるように見えると。確かに、そんな風に聞こえる話でもあります。が、ニート君の仕事に対する考え方と、内々定が出ている学生の仕事観と比較したときに、どちらがいいのか? と改めて問うと、言葉に詰まる人が少なくありませんでした。

 なぜなら、ある時期までのキャリア教育としては、天職という言葉や、人の役に立つ仕事、世の中のためになる仕事、もしくは『自分らしい働き方』というフレーズが、踊っていますから。ニート君の『言い訳』と称される台詞は、まさにその延長線上にある言葉なのです。多くの企業も、その延長線上での発言や行動を(建前上)学生に求めているケースは少なくない。

 もう一つ多かったのは、「内定がなかなか出ない学生に多い台詞です、それって」と、聞き慣れているフツーの話という反応。理想と現実との折り合いを、どこかでつけないといけないのに、取り残されてしまう学生もいますよね、という話になってしまう。「こういう夢見がちなタイプっていますよね」と同意を求めてくる人までいました。まあ、確かに現実はもっと厳しいし、ニート君の台詞は甘いのかもしれません。が、その台詞が『「いつからルールが変わって甘いと判定される』ようになったのか、それが曖昧なのも事実でしょう。

 だとしたら、夢物語のような理想的な話をぶら下げながら仕事について考えさせる行為は、その後に「現実はそれほど甘いものではない」という話とセットにしてするべきなのかもしれません。いずれにせよ、卒業したら働かなくてはならない、もしくは生活のために仕事をするのは必然、という状態ではない若い世代が増えている今だからこそ、この辺りの問題はもう一度考え直さなければならないでしょうか。

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