ネット&CRMで「おでかけ需要」をどう増やす?――JR西日本の取り組み(2/2 ページ)

» 2013年07月19日 07時45分 公開
[吉岡綾乃,Business Media 誠]
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近距離利用を増やすには?――マイ・フェイバリット関西

「マイ・フェイバリット関西」

 ここまでの例は、新幹線利用者を増やす目的の、旅行の取り組みだった。JR西日本ではこのほかに、近距離移動つまり在来線乗客の「おでかけ」を増やす取り組みも行っている。

 「マイ・フェイバリット関西」(参照リンク)は、2011年にスタートした企画だ。大型商業施設「大阪ステーションシティ」のオープンがきっかけだったという。同社には「女性に訴求できていない」という問題意識があり、買い物をしたい若い女性に訴求しようという目的から始まった。一言で言えば「関西のおでかけWebマガジン」である。

 マイ・フェイバリット関西のWebマガジンの内容としては、まずおでかけ先を提案する特集記事を月2回発行。また、人気スポットやイベント情報もWebで提供している。出かけた先では、スマートフォンを使って読者をサポート。Webで見かけた情報(イベントやお店など)をクリップしておいて、スマートフォンから見ることができるモバイルガイド「旅のしおり」、GPSを使ったルート案内、現地クーポン、SNSのマルチポスト機能などをスマートフォン用に提供している。

 こうして作った「おでかけ」利用をどう鉄道利用につなげるか? ここで出てくるのがCRMだ。マイ・フェイバリット関西の会員IDと、「スマートICOCA」※とをひもづけて、マイ・フェイバリット関西会員が鉄道を利用したときにはポイント還元するという試みを行った。このほかにも、上述の大阪ステーションシティが開業1周年を迎えたとき、マイ・フェイバリット関西会員がスマートICOCAでJRを使った場合、大阪駅までの運賃を2割引するといった取り組みを行っている。

※スマートICOCA…ICOCAはJR西日本が運営しているIC乗車券で、Suicaと相互利用ができる。ICOCAのうち、クレジットカードにひもづいたものを「スマートICOCA」と呼ぶ。

 ここで注目したいのが、メルマガの効果的な利用だ。それまでもJR西日本では、他社のメルマガを使って、70万人もの読者に向けてマイ・フェイバリット関西の会員獲得広告を出していたが、そのときは1日10〜20人程度しか会員は増えなかった。しかしマイ・フェイバリット関西のキャンペーンについて、JR西日本の会員(Club J-WEST)にメールを送ったところ、1日1000人以上の会員が獲得できたという。

大阪市営地下鉄や私鉄と連携してアクセスアップ

「大阪カフェ」

 JR西日本単体ではなく、ほかの鉄道会社と一緒の取り組みも行っている。今年の2月、大阪市営地下鉄と連携して始めたのが「大阪カフェ」(参照リンク)。これは、JR西日本と市営地下鉄と、お互いのオウンドメディアを使ってクロスメディアで情報を展開する、という試みだ。

 例えば大阪市営地下鉄沿線のカフェの話題をマイ・フェイバリット関西に記事掲載したり、逆に、地下鉄の沿線情報誌にマイ・フェイバリット関西の情報を掲載してもらったり。こうした取り組みをしたところ、Webマガジンのマイ・フェイバリット関西は過去最高のアクセスを記録した。「記事自体も良かったのでしょうが、他社で告知できるとやっぱり違います」(小菅氏)

 「シティハイクOSAKA」は、2013年3月21日から全国のICカードの相互利用が可能になったことを受け、関西鉄道6社が連携して、この春スタートした企画である。マイ・フェイバリット関西にシティハイクOSAKAとのコラボページを作ったり、各社私鉄の駅や車内に、サイトと同じビジュアルのポスターを貼ったりといった取り組みを行い、関西鉄道6社が連携して大阪をPRしている。

「シティハイク大阪」

 JR西日本では、ここで紹介した以外にもネットを活用したさまざまな取り組みを行っている。講演中、小菅氏が何度も強調していたのは、他社との連携、そしてCRMの重要性だった。

 「おでかけ需要創出には、『ネット&CRM』の活用が重要な役割を担います。お客さまを含めたステークホルダーとの連携が実現すれば、ネットの力はますます強化されます。ここでポイントは、(事業者だけでなく)お客さまにもご参加いただける企画を考えることです。私たちはこれからも、関西の活性化に向けて、さまざまな連携を進めます」(小菅氏)

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