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» 2013年07月05日 00時00分 UPDATE

小飼弾×松井博、どこへ行く? 帝国化していく企業(6):学校へ行くメリットが説明できない時代 (1/5)

仕組みをつくる一握りの人が富を握り、中間層の仕事は急速に消えていく。そんな世界の中、果たして教育はどうあるべきなのか。ネット上に教材が溢れ、ちょっと検索すればたいていのことの答えが見つかる中で、大学が果たすべき役割とは……。

[野本響子,Business Media 誠]

どこへ行く? 帝国化していく企業:

 アップルやマクドナルド、グーグルなどのグローバル企業は、いまや落ち目になった国家を尻目にどんどん強大になっている。低税率国の子会社を使った租税回避を行っていたり、低賃金で労働者を搾取し、法律を自分の都合のいいように変えるなど、やりたい放題やっているように見える。

 一方で、先進国の中間層は没落し、多くの人がグローバル化の名目のもと、時給で働く労働力として使われ始めている。民主主義はもはや機能していないのだろうか。人々が幸福になれる未来は来るのか。

 書評を中心としたブログを運営しアルファブロガーとして知られる元技術者の小飼弾さんと、元アップル管理職の松井博さんが語り合った。全7回でお送りする。

 →アップルやマクドナルドは、本当に“悪の帝国”なのか?(1)

 →企業帝国の弱点とは? そこで働く人たちの悲哀(2)

 →先進国にとっての労働は「暇つぶし」なのか(3)

 →「ベーシックインカム」は人間を幸せにするのか(4)

 →壮大な“実験国家”米国から何を学べばいいのか(5)

 →本記事、第6回


「仕組みを作る能力」は教育できるのか

yd_taidan1.jpg 松井博さん

松井:小飼弾の「仕組み」進化論』(日本実業出版社)を読ませていただきました。僕はさんざん仕組みづくりをやってきたので、非常に面白かったです。ただね、この本を読んでも、多くの読者は内容をよく理解できないのではないかと思いました。というのも、ほとんどの人は仕組みをつくった経験がないし、仕組みの作り方を学習する機会もないですよね。「便利そう。でもオレはどうやっていいか、分からない」となってしまうのではないでしょうか。

小飼:他人を「働かせる」という経験がないんですよね。

松井:仕組みづくりって、学校では教えてくれません。日本の学校は人との距離を測るとか、言われたことをやるとか、そういうことしか学校で教えてくれない。もし“企業帝国(国境を気にせず自らの利益を追い求める企業)”で出世したければ、仕組みづくりができないとダメなんですよ。

小飼:「仕組みの主になれ」ということですね。人を奴隷として搾取するのは人倫にもとるけど、コンピュータならいいわけですし。

松井:人を使うにしても「どういう仕掛けをつくってどう使うのがいいか」というデザインをしなければいけません。そういうところがないがしろにされすぎています。教育すべきはたぶんそこなのに……。

小飼:しかし教育でできるのでしょうか。こう言ってはなんですが、「検索して分かること」というのは、もはやすでにお金を払うような教育ではないんです。覚えている必要性がないですから。

松井:そう、見たいときにまたググればいいわけですからね。僕は「仕組みが大事だよ」っていろんなところで言ってきましたが、「仕組みをつくる」ことをどうやったら教育できるのか、よく分からないんです。国がやるべきなのか、それとも企業がやるほうがいいのか。

 一方、ネットで検索して自分で自分を教育する人がいっぱいいるわけで。後進国ではそうした人が増えてきました。

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