人事担当者と「社史」のキケンな関係サカタカツミ「就活・転職のフシギ発見!」(3/3 ページ)

» 2013年06月24日 02時15分 公開
[サカタカツミ,Business Media 誠]
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 このタイプの人事がいる企業は、新卒採用が得意な企業であることも見逃せないポイントです。就活生は「仕事をした経験がない」ので、その企業の過去を知り、その過去の延長線上にある組織の一員になることは「素晴らしいことで、誇りに思うべきだ」と言われると、真に受けてしまうことも少なくないのです。

 特に新卒に関しては「どんな仕事を、企業はあなたたちに期待している」というやり取りは、きわめて抽象度の高い(具体的ではない)話になりがちです。会社説明会で内容は薄いけれども感動的な動画を流したり、事業などを説明する入社案内をドキュメンタリー番組タッチで作成したりすることで、組織への帰属意識を醸成することを日常茶飯事としてやっているケースも見受けられます。ただ、中途入社の人たちに同じ手法は通用しません。

 本来、その組織に属しているという喜びは、仕事が面白かったり、誇りを持てる承認欲求が満たされる瞬間があったり、一緒に働く人たちが魅力的だったり、未来予想図が共感できたりといった、企業の本質的な部分によるものが大きいはずです。しかし、組織の風通しを良くする、プライドを持って仕事に打ち込めるような工夫をする、待遇などを含めて職場環境を改善する、といった作業は「やりましょう」と声を出しても一朝一夕にできるものではなく、調整をする部署が多岐にわたったり、予算の確保が膨大だったりします。そこで「簡単に」かつ「部署内」で調整がつく「会社の歴史教育」という手段に行き着いたとしたら……それでは問題はなにも解決されないし、すべてを覆い隠したままになってしまいます。

 裏を返せばという言い方も変ですが、皆さんの会社の人事セクションが「社史」であったり、創業者の「思い」を、いまさら感満載、かつ唐突に持ち出したりしたら、自分の職場はボタンを掛け違えたままで、何かをしようとしていると勘ぐってもいいのかもしれません。少しばかりご注意を。

リクエストがあったので(?)最後にイタリアのごはん写真を。左はローマの「ラ・カルボナーラ」というお店で食べたカルボナーラ。右はトリノに本店がある有名チェーン店「GROM」のジェラート。ときどき新宿店に行くのですが、ローマで食べたほうがもっとおいしく感じた……のは多分気のせい
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