小沢: デジタルマーケティングに関する投資について、もう1つの軸から議論してみたいと思います。お金や人をペイドメディアといわれる広告に投下していくべきなのか、それとも自社のWebサイト、オウンドメディアに注力していくべきなのか。
マーケティング活動というものは、コアの部分に「商材」があって、その外側にお客さんとの「接し方」があります。そのまた外側には、まだ接したことがないお客さんへの「届け方」、そして「広め方」という4つの区切りができそうです。あえて当てはめるとしたら、広め方や届け方の部分がペイドメディアとアーンドメディア、接し方の部分がオウンドメディアです。
ところがマーケティングの議論の中では、リターゲティングとか行動ターゲティングといった広告の手法が多く語られていて、実際、広告費がマーケティング活動費の大半を占めています。このままお金や人を広告のほうに振り分けていていいのでしょうか?
甲斐: そもそもペイドメディア、アーンドメディア、オウンドメディアという言葉が出てきたのは2年くらい前ですよね。冷静に考えてみると、インターネット初期から、それぞれ存在していました。なぜ、最近になって話題になったのか。
それは、検索エンジン連動型広告のようなペイドメディアを買うことの効果がはっきりと見えるので、業務の中で重要なものとされたからです。それに加えて、「どうやらオウンドメディアやアーンドメディアというものにも効果があって、うまく使えば成果が出るんじゃないか」と言われ始めた。だから、この3つのメディアを整理していきましょうとなったのだと思います。
ここでは「自動販売機」と「店員」という、普段の生活で接しているもので説明すると分かりやすいかなと思います。どちらもリアルな世界では日常的にある接点だと思います。
自動販売機というのは人通りの多いところに置かれていますよね。とにかく人がいるところに、便利で、すぐに買えるというツールとして、価格と商品が並んでいます。ちょっと乱暴かもしれませんが、バナー広告とかリスティング広告に近い。
一方で、リアルの世界では自動販売機があればそれで満足かといわれると、そうではありません。店があって、そこには店員がいる。写真には親切そうな女性が写っていますが、何度も通っているうちに自分にあった服装をレコメンドしてくれる。顔を合わせて「こんにちは」という気持ちよさだけでも、商品外の価値を提供してくれる。
われわれは、こうした2つの接点をうまく使っています。これをデジタルマーケティングの領域に当てはめてみると、トリプルメディアという概念の頭の整理がしやすくなるのではないかなと思っています。
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