番組を動画サイトにアップ、どう思う? テレビが面白い理由田原総一朗VS. 水道橋博士のテレビと著作権(後編)(6/7 ページ)

» 2013年06月19日 12時37分 公開
[COLABORAジャーナル]

テレビ番組の引用と、公的コンテンツの扱い

一般社団法人インターネットユーザー協会 代表理事 小寺信良

 個人が権利者の許諾なしに、テレビ番組をネットにアップロードして利用することは、著作権法により多面的に禁じられている。

 まず番組を“不特定または多数の人がアクセスできる環境”におかれている何らかのサーバにアップロードすることは、複製権及び送信可能化権の侵害となる。そこから、誰かのリクエストに応じて実際にストリーミングやダウンロードを提供すると、自動公衆送信権の侵害となる。送信可能化権も、自動公衆送信権も、あまり聞きなれないかもしれないが、「公衆送信権」という、不特定または多数の人にコンテンツを提供することをコントロールできる権利の一部として、著作権法に定められているものだ。

 またこれらの違法にアップロードされた番組を、違法にアップロードされたファイルと知りながらダウンロードする事は、2010年の著作権法改正によって違法化され、損害賠償などの対象となった(ストリーミングによる視聴は違法化されていない)。さらに2012年の改正では、商業コンテンツを違法にアップロードしたものをダウンロードする行為に対して、刑事罰が付けられることとなった。

 この2012年の改正時には、アクセスコントロールを回避してコピーすることも、同時に違法化された。アクセスコントロールとは、コンテンツの再生を制限することで著作物を保護する仕組みで、これまでは複製を制限するコピーコントロールとは区別されてきた。従来からコピープロテクトがかかったものを、技術的手段を用いて回避しコピーすることは違法だったが、この改正により、アクセスコントロールもコピーコントロールと同様の扱いとなった。

 例えば日本のテレビ放送は、アクセスコントロールのために暗号化されており、それを解くための“解読鍵”は、テレビなどに挿入するB−CASカードに記録されている。正規の“解読鍵”が使える機器やソフトウェアは、暗号化を解いた状態のコンテンツを取り出せないように、機能が制限されている。

 テレビ番組をネットに上げて、それを誰かが視聴するためには、暗号化を解いた状態でサーバに置いておく必要がある。しかし2012年の改正により、この行為が違法となったわけである。

 アップロード、ダウンロード、そしてアクセスコントロールを回避した上での複製の3つの規制により、テレビ番組をネットに上げて誰かの役に立てることは、三重に制限されている事になる。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.