今回は、JR東日本が定期収入減少に対してどのような手を打つのかを考えてみたいと思います。本題に入る前に、前回の内容を簡単に振り返ってみましょう。
- JR東日本が豪華寝台列車を投入することになった
- 同社の収益の大半は運輸業であり、さらに定期収入と不定期収入に分解される
- 人口減により、定期券を買う人の数は当然減る。つまり、定期収入の減少が今後も見込まれる
さて、それでは考えてみましょう。豪華寝台列車もその1つと考えられますが、それ以外にも手はあるような気がします。漏れのないよう検討するために、今回は「アンゾフのマトリックス」というフレームワークを使って検証してみます。アンゾフのマトリックスとは「市場」と「製品・サービス」の2つの軸に対して、それぞれ「既存」「新規」の2つの区分を設け、できあがった4つのカテゴリでマトリックスを形成したものです。今回のような企業の戦略を考える際には、非常に使えるフレームワークです。
- 既存市場に対する既存サービスの拡大:市場浸透戦略
- 既存市場に対する新規サービスの拡大:新製品開発戦略
- 新規市場に対する既存サービスの拡大:市場拡大戦略
- 新規市場に対する新規サービスの拡大:多角化戦略
企業の打ち出している戦略は、ほぼこの4つに分類できます。今回は定期収入の減少という環境変化を前提にしているので、
「既存市場」=「現役世代の人たち」
「既存サービス」=「鉄道による運輸サービス」
と定義して、戦略を考えてみます。
今回のクルーズトレインの投入はリタイア世代に対するツーリズムの拡大が目的であるといわれており、さらにはアジア圏をはじめとした外国人の富裕層を取り込んでいく狙いも垣間見えます。これまでも「大人のジパング倶楽部」などシニア向けの商品開発を行っていますが、これも含めて新規市場に対するサービスと考えられます。
一方で、駅ナカ事業とは異なり、運輸を活用したサービスを提供するので、今回の戦略は新規市場への既存サービスの拡大――つまり「市場拡大戦略」に該当するものと言えます。
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