6月3日、JR東日本がオリエント急行のような豪華寝台列車「クルーズトレイン」を新造し、2016年春に運行を開始すると発表しました。ツアーの料金は20万円にもなるとか。日本経済の持ち直しが期待されていますが、なぜJR東日本はこのような豪華な観光事業に参入する判断をしたのでしょうか。同社の外部公表資料をもとに分析してみたいと思います。
(出典:JR東日本)
JR東日本はグループ全体で、大きく以下4つの事業を行っています。
- 運輸業:鉄道による旅客を中心とした事業
- 駅スペース活用事業:改札の中にある、駅ナカショップの運営を中心とした事業
- ショッピング、オフィス事業:ルミネやアトレなど、駅ビルを中心とした事業
- その他:ホテル事業やクレジットカード事業など、上記に該当しない事業
グループ全体の売上高は約2.5兆円ですが、その約7割を「運輸業」が占めています。その運輸業は、さらに「定期収入」「不定期収入」の収入に細分化されます。
「定期収入」とは、ひとことで言えば通勤や通学などの定期券による収入のこと。JR東日本グループのおおむね2割を、この定期収入が占めています。一方の「不定期収入」とは、旅行時の新幹線の利用をはじめ、定期券を利用しない乗車の収入のこと。定期収入よりも少し規模が大きく、全体の5割弱がこの不定期収入です。定期収入は、私たち消費者の生活を想像すると必需的な支出ということが分かります。裏を返せば、JR東日本にとって定期収入は長期かつ安定的な収入源である一方、不定期収入は景気などの影響を受けやすいカテゴリと考えることができます。
今回のクルーズトレインの投入は、主に東日本地域のツーリズムの開拓の一環としてのものであり、直接的には運輸業の不定期収入にインパクトを与える決断だと分かります。
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