ほんとに景気はよくなるの? 生活者意識から考えた、景気回復のツボ博報堂・吉川昌孝のデータで読み解く日本人(1/4 ページ)

» 2013年06月10日 00時00分 公開
[吉川昌孝,Business Media 誠]

博報堂・吉川昌孝のデータで読み解く日本人:

 30年以上にわたり生活者を研究し続けてきた「博報堂生活総合研究所(生活総研)」。同研究所の主席研究員である吉川昌孝氏が、生活総研オリジナル調査「生活定点」などのデータを用いて、“時代の今とこれから”を読み解きます。

 「生活定点」とは、1992年から20年間にわたって隔年で実施している時系列調査。衣食住から地球環境意識に至るまで、人々のあらゆる生活領域の変化を、約1500の質問から明らかにしています。現在、生活総研ONLINEで20年間のデータを無償公開中。こうした生活者データから得られる“ターゲット攻略のヒント”はもちろん、ビジネスパーソンの日々の仕事に役立つ“データを読み解く技術”などもご紹介していきます。


著者プロフィール:吉川昌孝

 博報堂生活総合研究所研究員、および動態研究グループ・グループマネージャー。1965年愛知県生まれ。慶應義塾大学商学部卒、同年、博報堂入社。マーケティングプラナーとして得意先企業のマーケティング戦略立案業務を担当。2003年より生活総合研究所客員研究員となり、2004年より生活総合研究所に異動。2008年より未来予測レポート『生活動力』のプロジェクトリーダー。著書に『亞州未来図2010−4つのシナリオ−』(阪急コミュニケーションズ・共著)、『〜あふれる情報からアイデアを生み出す〜「ものさし」のつくり方』(日本実業出版社)などがある。2008年より京都精華大学デザイン学部非常勤講師。


 日経平均株価が今年3月、リーマンショック前の水準に戻りました。株価についてはダイナミックな動きが続き、日々ニュースでの話題に事欠かない昨今ですが、一般の生活者の景気意識はどうなんでしょう? 景気回復を実感しているのか? 消費行動は活発になってるのか? 今回は我々が実施している「消費意欲指数」(※1)と「デフレ生活指数」(※2)の動きから、生活者の今の景気意識と、今後の景気刺激策のアイディアを考えてみました。

(※1)消費意欲指数とは「消費意欲(モノを買いたい、サービスを利用したいという欲求)が最高に高まった状態を100点とすると、あなたの来月の消費意欲は何点ぐらいですか。」という質問への回答率です。
(※2)デフレ生活指数とは「デフレ生活志向(安くモノを買いたい、安くサービスを利用したいという欲求)が最高に高まった状態を100点とすると、あなたの来月のデフレ生活志向は何点ぐらいですか。」という質問への回答率です。ともに、2012年の5月より毎月、東京、大阪、名古屋の20から69歳までの男女1500名に調査をしています。詳しくはこちら
消費意欲VS. デフレ生活指数

 上のグラフを見てください。消費意欲指数と同時に取っているデフレ生活指数のこの1年の動きです。3月以降は完全に横ばい。目立った動きを示していません。

 「景気が上向きになる気配が感じられる」とか「保有している株価があがり、気分的に余裕が出てきた」などのコメントを残しているのは男性の40〜50代が中心です。株価が戻った直後の4月に彼らからそうした声がちらほら聞こえ出しましたが、その他の年代、特に若い層では全くと言っていいほど聞こえてきません。

 それよりもむしろ、それとは反対の声、例えば「将来に不安がある。 消費税は上がるし、税金はあがるし、それなのに入ってくるお金は増えない」のようなコメントが目立ちます。男性の20代では4月の消費意欲が、調査開始以来の最低値を記録。特に3月に多く使った反動や今後の出費のために控えるという意識が働いているようでした(生活インデックスレポート消費動向編2013年4月9日号参照)。株価は戻っても、まだまだ一般生活者の日常レベルにまでアベノミクス効果は及んでない様子です。

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