BBAって何? 「少年よ大志を抱け」とあいまいな日本語ビジネス英語の歩き方(2/2 ページ)

» 2013年06月05日 08時00分 公開
[河口鴻三,Business Media 誠]
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あいまいな日本人が、日本語をあいまいにする

 英語はロジカルな言葉です。近代科学と資本主義、それに民主主義という3点セットと、ロジカルな現代米英語は切っても切り離せません。

 確かに日本語もロジカルに使える言葉です。ノーベル賞をたくさん受賞している日本の科学分野の研究も、ほとんどが日本語で行われています。山中伸弥教授だって、日本語で日常の研究をし、論文を書いているのです。もちろん主要論文は、英語で書いていますが。

 しかし同時に、日本語は非常にあいまいでもあります。大江健三郎氏はノーベル賞受賞講演を「あいまいな日本の私」というタイトルで行いました。日常、今の日本人が使う日本語は非常にあいまいです。NHKのアナウンサー、キャスターが話す日本語だって、朝日新聞の天声人語の日本語だって、極めてあいまいです。

 厳密にいうと、責任から遠くわが身を離しておきたい、結論めいたことをいって、後から追及されるようなことにはなりたくない。こういう現代の日本人の逃避傾向が、ロジカルにもあいまいにも使える日本語を、あいまいのほぼ限界領域で使うケースが増えている。それが今日の状況です。

 普通の私達が話す日本語もどんどんあいまい化が進んでいます。例えば、プロ野球のピッチャーが「次回はもう少し自分の投球ができればいいかなと思います」というコメントを残します。「できればいいかな」というのは他人ごとです。「したいと思います」という意味が、どんどんあいまいな方向に変化しています。

 これが日本人の英語ベタをどんどん深刻化させています。「Boys」とせっかくクラーク博士が、全員を対象にして発したメッセージを「少年よ大志を抱け」と、単数で日本語にして何の不思議も感じません。そこが問題なのです。

 「あなたのは屁理屈。こういうときに日本語では、単複を区別してないんだよ。両方意味してるんだよ。だから日本語は便利だということが、まったく分かってないね」

 そう思っている人がいるはずです。まあ日本語だけの世界の話なら、通じる考え方です。でも、残念ながら英語ではダメなのです。「Boy, be ambitious.」では、目の前にいる少年1人に対して言っている状況以外に、あり得ません。同時に「Boys be ambitious.」のように、呼びかけを意味するコンマを忘れたら、それはまったく意味不明の単語の羅列になってしまうのです。

 札幌羊ヶ丘展望台にあるクラーク像の台座には「BOYS BE AMBITIOUS」と刻まれています(参照リンク)。こんなに立派な銅像に、意味不明な言葉が刻まれてしまっているのです。

 いずれにしても、単数か複数かというのは、英語においては決定的に違います。また動詞と主語の数、時制の合致も極めて大事です。そうしたポイントを理解しないと、英語は絶対にうまくなりません。ビジネスの交渉でも、とんでもない失敗に結びつきかねないということを、ぜひ覚えておいてください。

社会人の学び
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