年金を担保にした「偽装質屋」――被害を拡大させたのは誰だ?窪田順生の時事日想(2/3 ページ)

» 2013年06月04日 08時00分 公開
[窪田順生,Business Media 誠]

使い古された手口がブレイクをした理由

 2010年ごろ、「消えた老人」などといって、全国で100歳以上で所在不明の老人が23万人いることが分かったと大騒ぎになったが、その裏にはこういう年金担保を使ったアングラビジネスがあった。事実、山口組系暴力団幹部(36)が、すでに死亡している他の幹部の父親の年金600万円を不正受給し、組の運営費に充てていたとして警視庁に逮捕されたこともあった。先ほどふれた福岡の「偽装質屋」も1988年ごろから高齢者を相手にして、年金を担保にしてカネを貸し付けていたという。

 そんな使い古された手口がなぜ急にブレイクをしたのか。答えは簡単だ。

 総量規制の影響だ(関連記事)。ご存じかもしれないが、2006年の貸金業法改正によって、カネを借りれるのは定期収入がある人で、「年収の3分の1まで」という条件をもうけた。貧乏人ほど借金しなくちゃいけないのに殺す気か、と文句を言ったら、金融庁のおえらいさんは「そういう人はキャベツをかじってて」と相手にしなかった。

 だから多くの人が、ヤミ金にすがった。定職についていない人や仕事を失った東北の被災者、そして高齢者……。“最後の頼みの綱”を警察に売る恩知らずはいない。ヤミ金の摘発数は右肩下がりで減っていった。被害額も2012年には最少の109億9000万円まで減少した、と警察庁が得意げに発表したが、なんのことはない、「偽装質屋」に流れていたというわけだ。

 昨年2月以降、群馬、愛知、大分、鹿児島などで計11人が逮捕され、被害者は約4300人にものぼる。しかも、5月30日に福岡で摘発された偽装質屋なども、5年間で少なくとも約9600人に約74億円も貸し付けたという。

法外な高金利を取り立てる「偽装質屋」が各地に進出している(写真はイメージです)

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