コラム
» 2013年06月04日 08時00分 UPDATE

窪田順生の時事日想:年金を担保にした「偽装質屋」――被害を拡大させたのは誰だ? (1/3)

年金を担保にした「偽装質屋」が増えている。この手口は使い古されたものだが、なぜ急に増えているのか。その背景には、2006年に施行された法改正があった。

[窪田順生,Business Media 誠]

窪田順生氏のプロフィール:

1974年生まれ、学習院大学文学部卒業。在学中から、テレビ情報番組の制作に携わり、『フライデー』の取材記者として3年間活動。その後、朝日新聞、漫画誌編集長、実話紙編集長などを経て、現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌でルポを発表するかたわらで、報道対策アドバイザーとしても活動している。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。近著に『死体の経済学』(小学館101新書)、『スピンドクター “モミ消しのプロ”が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)がある。


 最近、日本各地で高齢者をターゲットにした「偽装質屋」がパクられている。

 ニセの質屋とはなんこっちゃ、と思うかもしれないが、表向きは質屋の看板を掲げているものの、実際は違法な金利でカネを貸し付ける業者のことだ。要するに、ヤミ金である。

 一応アリバイとして100円ショップで買ったメガネやら壊れた腕時計なんかを質入れさせるが、そんなモノは担保にならない。そこで差し出すのが、「年金」だ。つまり、毎月受給される年金を利息にあてているのだ。

 お年寄りに対して、血も涙もない連中だと思うかもしれないが、実はこの「年金担保」というのはヤミ金のなかではかなり古典的な手口として知られている。この手の取材を始めた15年前には、アングラビジネスをしている者たちの間では、「まだそんなのやってるの」みたいな印象だった。

 あまりに横行したので、年金担保自体を「福祉医療機構」という独立行政法人だけにしか認めなくなったのだが、そこは悪知恵が働く人々である。うまいやり方を思いつく。

 例えば、ヤミ金でクビが回らなくなった男がいる。なにもなければガンガン追い込まれて、タコ部屋に放り込まれるところだが、年金暮らしの親がいると話は変わってくる。ヤミ金は男にこのようにささやく。

 「母ちゃんの年金を担保に融資を受け、そこから利子を払おう。公的融資だから金利は安いし安心だろ」

 さっそく男は親を引っ張っていって窓口で手続きをして、「利子を差し引いてから必要な分だけ渡す」というヤミ金に融資金や年金が振り込まれる預金通帳と印鑑を渡す。あとはヤミ金は寝ていてもカネが転がり込む。母は死ぬまで年金を搾り取られる。いや、死んでからもしゃぶりつくされる。親の亡きがらを前にして、男にヤミ金はこんなことをささやく。

 「死亡届だしたら年金がもらえなくなっちまうぞ。いいのか?」

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