エグゼクティブコンサルタント、森本千賀子さんに聞く――「愛される経営者像」とは?(3/3 ページ)

» 2013年06月03日 17時00分 公開
[月刊総務]
月刊総務
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社員の目線に下りてメッセージを伝え続けるのが愛される経営者像

編集部 では次に、経営者の姿勢についてお聞きします。これからの時代、愛される経営者の姿とはどのようなものでしょうか?

森本 やはり、一番は社員にトップの顔が見えることですね。私の話になりますが、前任の社長は必ずフロアを巡回して、社員みんなに声がけをしていました。私たちの目線まで下りてきてくれていると思い、身近に感じることができたものです。また、当時は四半期ごとに節目があったのですが、その際は必ず社員に自分の声を届けていました。「自分はこう思っている、こう感じている」「次の四半期はこうがんばっていこう」など、自分の言葉で具体的に社員にメッセージを送ってくれました。

編集部 なるほど、まさに親しみの持てるトップの姿ですね。では、受け手である社員はどう捉えればいいでしょうか?

森本 逆に、自分の声を上層部に伝えられれば、風通しが良い組織が徐々に作られていくのだと感じます。一定規模以上の会社の社長ともなると、現場社員との距離の隔たりを不安に感じていることが多いものです。

 これは、採用コンサルタントとして多くの社長とお付き合いしてきた経験から実感したことですが、社長は「現場の声」を直接聞く機会を待ち望んでいるのです。気軽に発信していいのかどうか気後れする人も多いと思いますが、そうすることで現場の不満を伝えることができ、何よりトップの考えていることを共有する良い機会にもなります。

編集部 なるほど。お話を聞いていて、自分のトップがとても身近に感じられてきました。

森本 ぜひ、身近に感じることをお勧めします。ただし、上層部に対して自分の意見を訴える前に必ずすべきことがあります。今、担当している仕事に全力で取り組み、きっちりと実績を上げることです。中には「今の仕事は自分に合っていない。別の部署・職務に異動できれば、自分の経験をもっと生かせるしモチベーションも上がるのに」と、不満を抱いている人もいるかと思います。

 けれど、決してくすぶることなく力を抜かず、苦手意識のある仕事にも真剣に取り組んでみてください。苦手な仕事ゆえになかなか優れた成果を上げられなかったとしても、少しでも自分の持ち味を生かす工夫をして「得意なこと」をアピールし、周囲からの評価を得てください。今の仕事でのパフォーマンスを認められてこそトップとの対話が有効なものになりますし、結果的に自分自身も本当にやりたい仕事に巡り合えるチャンスを手にできるのです。

編集部 ありがとうございます。では、トップの目線からお聞きします。社員に対してのメッセージの発信の仕方について教えてください。

森本 トップは誰に対して発信しているのかをはっきり明確にし、そこに自分の意志や想いを乗せて送り続けることがとても大事だと思います。社員の立場で考えれば、自分が所属している組織の長が何をどう考えているか、知る機会はほとんどないと思います。トップは役員会で自分の考えを発言しても、現場の社員まではどうしても伝わりません。

 だったらトップが社員の目線に下りていき、常にメッセージを発信し続けることで会社の意志や考え、理念が自然と浸透していく……。そんな組織が、やはりこれからは生き残っていけるのだと思います。

編集部 ありがとうございました。最後に、森本さんご自身の生き方の中から、読者にアドバイスをお願いします。

森本 私は人とのつながりが、良い人生を作るのだと確信しています。人との出会いは単なる偶然ではなく、必ず意味があります。だから私は、1つひとつの出会いを大切にしたいと思っています。

編集部 やはりずっと「人」をテーマにしてきた森本さんならではの視点ですね。私たちが日常で具体的にできることはありますか?

森本 例えば、メールや電話だけで済む用件であってもなるべく会って話をしたり、会議室で話すだけでなくランチやお茶にお誘いするなどもいいでしょう。すばらしい出会いは自分の中の新しいスイッチを押してくれて、人生を楽しく、豊かなものにしてくれます。意欲がわかず前向きになれないときは、人は他人との交流を避けてしまいがちです。けれど、そんなときほど動いてみてください。そして、1つひとつの出会いを生かし「意味のあるもの」に変え、新しい自分や新しい人生を、ぜひ発見してみてください。

森本千賀子著『HONKI SWITCH ON』(Nanaブックス)

 日々懸命に働きながらも、心のどこかで「このままでいいのか」とモヤモヤしている。「なりたい自分」になることをあきらめてしまっている……。そんな人に力を与えるのが、本書『HONKI SWITCH ON』だ。エグゼクティブコンサルタントの森本氏が、今の仕事を「つまらない」「しんどい」と感じている人や本気になれない環境で毎日あえいでいる人の「本気スイッチ」を押してくれる。「本気」になれるポイントは、いつもわたしたちの前にある。まずは目の前の仕事に全力投球したくなる、そんな1冊だ。


本記事は、『月刊総務』2013年3月号「特別インタビュー」より転載しました。


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