日本とは違う、住所の書き方に現れる英語圏の世界観ビジネス英語の歩き方(2/2 ページ)

» 2013年05月22日 08時00分 公開
[河口鴻三,Business Media 誠]
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アドレスがなぜ「演説」になるのか?

 ところで英語の「Address」という単語には、「住所」のほかにも「演説」という意味があります。住所と演説、一見関係なさそうな意味がどうして同じ単語にあるのでしょうか。

 その疑問を解くには、この単語の動詞の意味を調べると分かるかもしれません。動詞では、「ものごとを詳しく説明する」という意味になります。

He addressed the point to the new client.(彼はその点を新しいクライアントに、詳しく説明した)

 ここで暗黙のうちにイメージされているのは、話し手が聞き手をはっきり意識して特定していること、そして「時間をかけて」詳しく説明するという点です。つまりAddressという英語には、広い世界、あるいは概念、考え方の中で、1点に絞って焦点を示すというニュアンスがあるのです。

 米国において、住所は「そこを目指して行く人がいかにイージーにたどり着けるか」を目的に決められています。例えば、住居表示で最初に示す数字は、奇数と偶数とで同じ通りのどちら側にあるのかが分かるように使い分けられています(例外もあるかもしれませんが……)。

 ホテルのルームナンバーも同じです。奇数と偶数は、廊下のどちらか片方に決まって使われます。米国出張などでホテルに泊まり、フロントでもらった部屋番号が奇数だったら、廊下で奇数が並んでいる側を探していけば部屋にたどりつきます。左右をきょろきょろする必要はありません。

 ついでに触れておきますと、米国の道路番号は、奇数が南北、偶数が東西に走っている道路に与えられます。特にインターステートと呼ばれる大きな高速道路ではこの原則が徹底しています。かつて人気のあった「ルート66(シックスティシックス)」というテレビ番組は、シカゴからカリフォルニアのサンタモニカまで、米中央部を東西に横断する幹線道路の町々で起こるさまざまな出来事を描いたドラマでした。ルート1(ワン)は、日本でいえば国道一号線で、東部の海岸線を南北に縦断する道路です。

 無人の荒野だったところに道路を作ったからできた仕組みですが、一方で日本の道路番号の付け方はまったく無原則に近く、じつに分かりにくいのには閉口します。国道と県道は管轄が違うとか、補修管理などに関して担当が違うのはある程度仕方がないとしても、道路名や国道、県道の数字にまったく一貫性がないのは、役人諸氏の頭の悪さか怠慢を証明する以外の何ものでもないと言えるでしょう。

 ところで、日本の住所を海外の人に伝えるとき、みなさんは欧米風に順番をひっくり返していませんか? 例えば、

1-22, Akasaka 8-chome, Minato-ku,

Tokyo, 107-0052, Japan

といった具合です。この明治以来の習慣も、ぼつぼつ合理的なものに変えてもいいのではないかと思います。

Minato-ku, Akasaka 8-chome, 1-22

Tokyo, Japan, 107-0052

のように、市名、郡名、区名、番地などは日本の住所と同じように書いて、最後に都道府県名、国名と書けば、日本の郵便配達の人も問題なく対応できるでしょう。海外の郵便関係者にとって、「あ、これはJapanのTokyo行きだ」と分かりさえすれば、細かい住所はほとんど関係ないからです。

著者プロフィール:河口鴻三(かわぐち・こうぞう)

河口鴻三

1947年、山梨県生まれ。一橋大学社会学部卒業、スタンフォード大学コミュニケーション学部修士課程修了。日本と米国で、出版に従事。カリフォルニアとニューヨークに合計12年滞在。講談社アメリカ副社長として『Having Our Say』など240冊の英文書を刊行。2000年に帰国。現在は、外資系経営コンサルティング会社でマーケティング担当プリンシパル。異文化経営学会、日本エッセイストクラブ会員。

主な著書に『和製英語が役に立つ』(文春新書)、『外資で働くためのキャリアアップ英語術』(日本経済新聞社)がある。


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