コラム
» 2013年05月22日 08時00分 UPDATE

藤田正美の時事日想:安倍首相は痛みを伴う改革を断行できるのか (1/2)

英エコノミスト誌の最新号表紙は、スーパーマンに模した安倍首相が空を飛んでいるものだ。官僚の「天敵」たる規制緩和を実行できるのか。

[藤田正美,Business Media 誠]

著者プロフィール:藤田正美

「ニューズウィーク日本版」元編集長。東京大学経済学部卒業後、「週刊東洋経済」の記者・編集者として14年間の経験を積む。1985年に「よりグローバルな視点」を求めて「ニューズウィーク日本版」創刊プロジェクトに参加。1994年〜2000年に同誌編集長、2001年〜2004年3月に同誌編集主幹を勤める。2004年4月からはフリーランスとして、インターネットを中心にコラムを執筆するほか、テレビにコメンテーターとして出演。ブログ「藤田正美の世の中まるごと“Observer”


 安倍政権が成立して以来、日本の外交政策にはグランドデザインがあるように見えていた。オバマ米大統領との首脳会談、ASEANへの訪問、TPP交渉への参加表明、ロシアとの首脳会談等々。民主党政権下で官僚が逼塞(ひっそく)していた時代に、営々と築き上げてきた政策であるようにも思えた。

 その中で、突如浮上したのが飯島勲内閣官房参与の北朝鮮「電撃訪問」である。この訪問は北朝鮮から持ちかけられたものだろう。米韓合同演習にかこつけて、強硬姿勢をとり続けていた金正恩第1書記は、後ろ盾だった中国からも金融制裁を受け、袋小路に入り込んでいる。核兵器の放棄を条件とする米国とは、なかなか話の糸口がつかめない。

 そうなると北朝鮮が狙ってくるのは、日本だ。日本は「拉致問題」について強い国民感情があり、この問題で北朝鮮側が多少の譲歩をすれば、日本も制裁措置で譲ってくる可能性が高いと踏んでいるのだろう。言い方を換えれば、拉致で釣れば日本が乗ってくるということだ。具体的にどのような話があったかは伝わってこないが、拉致被害者全員の返還、真相の究明、実行犯の引き渡しというのは建前であって、実際には被害者を返還すれば日本は何らかの形で譲歩せざるをえない。

 もし譲歩をしないといえば、被害者を返さないと北朝鮮は言い張るだろうし、その交渉が外に漏れれば、被害者を見殺しにするのかという非難の大合唱になる。ミサイルや核のために、日本人を犠牲にするなと言われれば、安倍政権がどこまで米国や韓国と歩調を合わせることができるだろうか、はなはだ心許ない。

 米国は「北朝鮮は、日米韓の間に楔を打ち込むつもりだ」と牽制している。つまり日本に対して「すぐその気になるな」と言っているわけだ。しかし安倍政権にとっては、参院選だけでなく、今後のことを考えても、ここで北朝鮮を相手にポイントを稼ぐことは極めて重要だ。通常、外交はなかなか政治家の点数になりにくいが、拉致問題だけは別である。

 ただ問題は、もし北朝鮮に対して制裁を緩和するつもりがあるなら、何をどこまでという限界をはっきりさせなければなるまい。つまり拉致被害者を人質にされて、ずるずると北朝鮮のペースに引き込まれることは厳に慎まなくてはならないと思う。

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