トラックドライバーが不足しているのに、鉄道貨物が盛り上がらない理由杉山淳一の時事日想(5/5 ページ)

» 2013年05月17日 08時01分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]
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トラック業界を巻き込んだ改革が必要

 線路使用料がある限り、鉄道とトラックの運賃格差はなくならない。これを解決するためには、いっそ「すべての線路を国道や県道と同じように国有線路、県有線路などとし、旅客会社や貨物会社が列車運行に応じた線路使用料を払う方式」にすればいい。これで、貨物だけではなく、旅客鉄道の赤字ローカル線体質も同時に解決できる。

 あるいは、料金差を解消するために、トラック側を規制する方法も考えられる。トラックの取得税や重量税などを上げたり、一般道の走行分まで費用負担を求める。または、長距離大型トラックについて、例えば200キロメートル以上の区間の運行を禁止する。これで強制的に鉄道輸送や船舶輸送へシフトできる。これもトラック事業者や荷主の同意を得にくいだろう。鉄道側の受け入れ体制も整えなくてはいけない。JR貨物寡占状態を助長するから、長距離トラック禁止と合わせて鉄道貨物事業の参入自由化も進める必要がある。

 どちらも頭が痛くなりそうだが、頭の痛くなるような施策を開発し、話し合う場が「貨物鉄道輸送の将来ビジョンに関する懇談会」ではなかろうか。線路使用料問題に目をつぶってはいけない。エコレールマークや省エネなどのスローガンだけでは、鉄道貨物へのモーダルシフトは起きない。これを明確な事実として認識する必要がある。

JR貨物が開発した貨物電車Mc250系。佐川急便がチャーターしており、モーダルシフトの象徴として話題になった
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