トラックドライバーが不足しているのに、鉄道貨物が盛り上がらない理由杉山淳一の時事日想(3/5 ページ)

» 2013年05月17日 08時01分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

鉄道貨物輸送の環境性能は高い、そしてコストも高い

 モーダルシフトに取り組んでいる日本通運の資料によると、東京―大阪間で10トンのJR貨物を輸送する場合、トラックから鉄道に切り替えれば、CO2排出量は74%も削減できる。東京―札幌間の場合、海運はトラックより38%、鉄道はトラックより64%もCO2を削減できる。こうした鉄道貨物の環境性能については国も応援しており、鉄道貨物で輸送された商品について「エコレールマーク」を付与して啓蒙している。トラック輸送から鉄道貨物に切り替えた事業者に対して、国から差額の半分までを補助する制度もある。

エコレールマークのゆるキャラ? エコレールマークは国土交通省がモーダルシフト推進スローガンとして掲げている

 トラックドライバーが不足することを受け、鉄道貨物は12フィートコンテナ中心主義からISOコンテナ、31フィートコンテナへの対応が進められている。そして環境性能が高い。ここまでそろうと、鉄道貨物輸送にとっていまは追い風の時期に見える。しかし実態は違う。国内の貨物輸送シェアについて、重量で計算した場合、鉄道は1%である。

 「貨物鉄道輸送の将来ビジョンに関する懇談会」は、この状態を打破すべく、JR貨物に対してコンテナやダイヤ、輸送障害対策を改善するように進言したり、海外のサプライチェーンマネジメントとの連携を求めたり、カーボンオフセット制度との連携なと、15項目の優先課題を挙げている。

 本コラムでかつて紹介したように、鉄道貨物にとって、国際規格のISOコンテナ、国内10トントラック相当の31フィートコンテナへの以降は急務だ(関連記事)。「貨物鉄道輸送の将来ビジョンに関する懇談会」もそれを指摘し、国を上げて取り組むべきだとアドバイスしている。ただし、大型コンテナ貨車が通行できない線路について、JR貨物の努力だけではなんともできない。ほとんどの線路はJR旅客会社が保有しており、JR貨物は線路を借りて、使用料を払って貨物列車を運行しているからだ。JR旅客会社がJR貨物のために線路を改良してくれるか否か、という問題である。

10トントラック相当の31フィートコンテナへの対応が進む

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