コラム
» 2013年05月14日 14時28分 UPDATE

超ミニ製造業者の新「三種の神器」とは何か?

生産点数がけた違いに小さいため、大手メーカーが無視するような「ロングテール製品」にフォーカスする超ミニメーカーに勃興の兆しがある。彼らの武器となる新「三種の神器」とは?

[日沖博道,INSIGHT NOW!]
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著者プロフィール:日沖博道(ひおき・ひろみち)

パスファインダーズ社長。25年にわたる戦略・業務・ITコンサルティングの経験と実績を基に「空回りしない」業務改革/IT改革を支援。アビームコンサルティング、日本ユニシス、アーサー・D・リトル、松下電送出身。一橋大学経済学部卒。日本工業大学 専門職大学院(MOTコース)客員教授(2008年〜)。今季講座:「ビジネスモデル開発とリエンジニアリング」。


 総計1万個に満たない数しか出ないような消費者向け製品は、大手メーカーにとっては勘定が合わず、企画段階で却下される。しかし多少高価でも「自分だけの商品」や独特のデザインを欲しがるコアなユーザー向けの「ロングテール製品」(ネット販売を前提にしたニッチ商品群)の領域が世の中では着実に拡がっている。

 こういうのはファッション品が先行したのだが、今や家電や自動車部品などの大量生産モデルの典型製品でさえ、1〜数10個単位で製造し販売するケースが出てきた。造り手は数人〜十数人という超ミニメーカーが主流であり、「1人家電メーカー」さえ登場している。その最大の武器が、価格が1〜2けた下がった3次元CADソフトと3Dプリンターである。特に後者には最近注目が集まっている。

 これらを活用することで、従来なら数週間かかったような試作工程が、速ければ2〜3日で済んでしまう。3Dプリンターのデータを送ればすぐ試作用部品を作ってくれる工房があり、翌日には届く。それで設計が固まった試作品をもとに量産工程に移ることで、開発・設計コストは大幅に抑制できる。

 従来の「型」による生産方式では難しかった中空(ちゅうくう)構造など、複雑な構造もお手のものである。プラスチックなどで均一に出来上がるタイプのものであれば、3Dプリンターさえ手元にあれば1個ずつ製品を「生産」できる。究極の多品種少量生産である。

 とはいえ多くの場合、3Dプリンターでの制作に向いているのは最終完成品より部品である。プリント「生産」したパーツを使って、電子回路などを組み込んで製品を組み立てるのが、今の「ロングテール製品」の生産方式の典型パターンである。

 最近では、本人の映像をいくつかの角度から撮影することで1人1個のオリジナルフィギュアを作る、新たな商売も出てきた。この調子では、芸能人やアスリートの写真を撮影して勝手にフィギュアを製造販売する業者も出てくるだろう(かなり売れそう!?)。

 今の3Dプリンターで生産できて売れ筋になるものはスマホカバーなどに限られているが、3Dプリンターの性能は急速に向上するだろうから、今後どんな製品が出てくるかは楽しみである。

 それに加えてCNCマシン(CNCマシニングセンタ。要は3D自動彫刻機)というものもすでにあり、筐体(きょうたい)などの金属加工製品なら、出来上がり品質とコスト競争力はこちらのほうが高いことが多いようだ。中古品を買うか、CNCマシンを所有している工房に委託すれば、それほど固定費を掛けなくとも済む。

 こうした設計・生産工程での変革ツール「3次元CADソフト+3Dプリンター(またはCNCマシン)」に加え、資金調達における「クラウドファンディング」、販売における「ネット通販」がそろうと、「ロングテール製品」を狙う超ミニメーカーのための新「三種の神器」と言えようか。

 クラウドファンディングのよいところは、資金調達の可否で需要の有無に関する一次スクリーニングができることである。そして一旦資金調達に成功すると、「投資家」がその生産者のサポータとして、購買者になったり紹介者になったりすることである。

 また、ネット通販のための選択肢は今後ますます拡充されよう。最近では従来難しかったオンライン店舗の開設が実に簡単、安価にできるサービスも現れているし、マーケットプレイスに出品することも簡単だ。

 超ミニメーカー勃興の条件はそろってきたといえるのではないか。(日沖博道)

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