女性をさらって「監禁」する男たちに、共通する「病」とは?窪田順生の時事日想(2/4 ページ)

» 2013年05月14日 08時00分 公開
[窪田順生,Business Media 誠]

佐藤受刑者の手口

 佐藤受刑者の人柄はひとことで言うと、「社会性ゼロ」である。

 思春期の頃から病的な潔癖性となり、高校卒業後に数カ月だけ地元企業に勤めるもののすぐに辞め、「引きこもり」となった。友人は大袈裟な話ではなくひとりもおらず、会話をするのは同居していた母のみだ。

 1日の大半を自宅2階にある自室で過ごし、たまに外に出かける時は、目的もなくひとりクルマを走らせるだけだった。

 そんな引きこもり生活をはじめて7年、26歳になった佐藤受刑者は下校途中の女子中学生を草むらに連れ込んで現行逮捕されるが、初犯で反省もしているということで執行猶予となった。しかし、その1年半後、彼はさらに恐ろしい事件を起こす。ドライブ中に見つけたAさん(当時9歳)を誘拐し、2階に連れて9年2カ月間、8畳の部屋から出さなかったのである。信じられないかもしれないが、母はAさんの存在を息子が逮捕されるまで知らなかった。20年以上も2階に上がることを許されず、2階に続く階段を見上げるだけで、息子から“お仕置き”をされたからだ。

 そんな男がゆえ、監禁の手口もカストロとはまったく異なる。

 2002年から2004年までカストロに誘拐された女性たちは、階下や地下室で鎖につながれていたが、佐藤受刑者は少女を縛らなかった。カストロの家は南京錠だらけだったというが、こちらは鍵などない。

 時には、彼女を家に残して、母と1日出かけることもあった。なぜそんなことが可能になったのかというと、「恐怖」で縛っていたからだ。

 「お前の家は分かっている。もし逃げたら、お前の姉さんをさらってきてやる」

 佐藤受刑者は9歳だったAさんに、何度も繰り返しこんな脅しをすることで、「逃げても無駄だ」という刷り込みをしていたのだ。

 実際に、彼女が9年2カ月間過ごした「監禁部屋」に足を踏み入れたことがある。窓を開けると、目の前には児童公園があり、少年たちが野球をしていた。こんな状況にもかかわらず、AさんはSOSを発することなく、命じられるまま、佐藤受刑者の部屋でじっと帰りを待っていた。そういう意味では、カストロよりも何倍も卑劣であり、狡猾な犯行といえる。

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