消費税アップでどうなる? 鉄道運賃「1円刻み制度」を試算した杉山淳一の時事日想(5/6 ページ)

» 2013年05月10日 08時01分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

「紙のきっぷだと高い」というより「IC乗車券だと安くなる」

 こうした規則を元に「紙のきっぷだと高くなる」という部分を検証しよう。先に挙げた16キロメートル以上20キロメートルまでの運賃で考えると、基準距離は18キロメートルで、16円20銭×18キロメートルで291.6円。10円未満の端数を切り上げて300円。消費税の15円を四捨五入して20円、加算すれば320円だ。

 同じ計算の要領で、消費税率を8%にした場合は消費税が24円となる。規則により消費税は四捨五入されて20円となるから、実はこの区間の場合は値上げにならない。これが紙のきっぷの値段となる。

 では、IC乗車券で1円単位の精算だとどうなるか。16円20銭×18キロメートルで291.6円。10円未満の端数ではなく、1円未満を切り上げて292円。消費税は23円36銭で、現行制度のままだと四捨五入して20円となる。しかし「適切な転嫁」を実施するためには、消費税も1円単位としないとおかしい。1円未満を四捨五入して23円。292円+23円で315円となる。紙のきっぷの場合の320円より5円安い。つまり現行運賃よりも安くなる。

 2015年には消費税が10%となる。同じ区間を計算すると、紙のきっぷは実質運賃300円に消費税が10%、30円となり、加算して330円。現在より10円アップだ。IC乗車券の場合は実質運賃292円に消費税が30円。加算して322円。紙のきっぷよリ8円安いし、2013年現在の運賃より2円高くなるだけだ。

 もちろんこれは現行制度のまま試算した場合で、消費税アップに合わせて基準運賃そのものが見直されたり、制度が変更された場合はこの通りにならない。特に消費税については同規則77条で「10円未満の端数は四捨五入」となっているが、1円刻み運賃を実施するにあたり「1円未満の端数は四捨五入」とすべきだろう。しかし、10円未満のままとするかもしれないし、「四捨五入」ではなく「切り上げ」とするかもしれない。その場合は上の計算で2015年のIC乗車券の消費税額が変わってくる。

 また、上記は運賃部分も1円刻みという前提だが、消費税の転嫁だけが目的なら、運賃部分は変更しないという場合もある。消費税で1円刻みができるのに、運賃では適用しないというのはどうかと思うけれど。

鉄道運賃はかなり複雑

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