消費税アップでどうなる? 鉄道運賃「1円刻み制度」を試算した杉山淳一の時事日想(3/6 ページ)

» 2013年05月10日 08時01分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

手間を省くために距離の区分を大きくした

 実は、このほかに規定があって、16キロメートル以上20キロメートルまでの運賃は、その中間の18キロメートルを基準とする決まりだ(同第77条の2)。つまり、実際の運賃は20キロメートルの乗車であっても、18キロメートルで計算する。16円20銭×18キロメートルで291.6円。10円未満の端数は切り上げて300円。消費税の15円を四捨五入して20円として加算すれば320円。これで運賃表と一致した。

 本来、1キロメートル単位で運賃を決めているにもかかわらず、運用上で一定区間の距離をその中間の距離とみなす。これはきっぷ販売の手間を軽減するためだろう。自動券売機以前の、窓口に行き先別のきっぷがズラリと並んだ時代の名残とも言える。10円単位できっぷの値段を設定すると、窓口にきっぷを並べきれなくなってしまう。自動券売機時代も変わらず、きっぷの価格帯が増えるとボタンの数が足りない。

 きっぷの行き先を駅名ではなく「160区間」と価格表示にしている理由も同じ。「同じ料金の駅名ぶんのきっぷを並べるくらいなら、値段でひとまとめにしよう」というアイデアだ。さらに言うと、130円大回り旅行でも知られているように「大都市近郊区間では経由駅にかかわらず最短距離で計算する」理由も、いちいち経由を指定するときっぷの販売が面倒だし、不正をチェックするために車内検札も必要になるからである。

乗車券と消費税の金額が決まる仕組み

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