しかし、通常「3年休職しました」とブランクのある人を採用したいと考える企業はそれほど多くありません(よほどのスキルを持ち合わせている人以外は、採用を見送られるのが普通です)。それを「3年休業しても働く場所を保障する」という仕組みは、ある側面では素晴らしいと考えるべきでしょう。また「3年間もブランクがあれば、キャリア形成において問題が多すぎる」という意見も見受けられましたが、これも以前書いた「35歳で初めて就職する」というコラムでも触れたように(参照記事)、今後は「働く期間が長くなる」という前提を踏まえれば、リカバリーできる範囲と考えてもいいはずです。
それなのに「あり得ない」と受け入れない当事者たちがいるのには、そこに隠れている違和感を見逃していないからなのかもしれないと、私は考えています。そう「3年間抱っこし放題」という言葉に隠されている意味を、少なくない当事者たちは敏感に捉えているのだと。これは「誰が」3年間抱っこし放題なのか、ということが問題なのです。ニュースで喧伝されている情報だけを見ていると、いかにも「子育ては女性がするものだと言っているようなものだ」と解釈されているようです。そこで、少し原点に返って「首相の発言」を見直してみましょう。
今回問題になっているスピーチは、首相官邸のホームページで動画が公開されています(参照リンク)。書き起こされていますので、内容を理解するのもそれほど時間はかからないでしょう。
女性の活躍については、スピーチの最後の段落で登場します。話は「女性を管理職などに積極的に登用してほしい」「待機児童を解消したい」「3年間抱っこし放題での職場復帰支援」と続き、さらに「子育て後の再就職・起業支援」まで言及しています。スピーチの通りとらえると、解決する順序は間違っていないし、女性のキャリアについても「ケースバイケース」を理解した上で支援しようと考えているように見えます。しかし、違和感を持つ人たちが気になるのは、スピーチにおける以下の部分なのでしょう。
妊娠・出産を機に退職した方に、その理由を調査すると、「仕事との両立がむずかしい」ことよりも、「家事や育児に専念するため自発的にやめた」という人が、実は一番多いのです。子どもが生まれた後、ある程度の期間は子育てに専念したい、と希望する方がいらっしゃるのも、理解できることです。(首相官邸ホームページ・安倍総理「成長戦略スピーチ」より引用)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング