安倍首相の「3年間抱っこし放題」は、本当に女性のキャリア支援になるのかサカタカツミ「就活・転職のフシギ発見!」(2/5 ページ)

» 2013年04月29日 08時00分 公開
[サカタカツミ,Business Media 誠]

育児休暇が明けたら、自分も周囲も「戸惑って」いた

 とはいえ、仕組みの変化などによる戸惑いは「慣れ」の問題ですから、時間が解決してくれそうな気がします。しかし別の女性は、こんな話をしてくれました。「顔ぶれは変わらないし、以前から通っていた職場。安心して復帰できたはずなのに、自分自身が変わってしまっていて、結果的に慣れないし、元には戻れないということを痛感しています」とのこと。子供ができた、そのためにすべての時間を仕事に費やすことができない、という「以前とは違う状況」に、自分自身が戸惑っているというのです。働ける時間も短くなってしまった(=長い時間働くことが良いことだとは思っていませんが、日本での職場環境の現実や、労働時間や環境に対して融通が利くことが高い評価を得る場合もあるという事実は否定できないと考えています)ので、できることも限られるし、与えられる仕事も限定されてしまう。同期がバリバリ働いているのを横目で見ながら、保育園のお迎えに急がなければならない自分に「戸惑って」しまうと言うのです。

 周囲の人たちも戸惑っています。このコラムを書くために取材をしているうちに「働ける時間が限られている人」に対して、職場が仕事をアサインする難しさが改めて浮き彫りになってきました。

 まとまった仕事を振ろうとしても、子供が病気になってしまったなどの理由で突発的に休まれて、期日までに仕事が終わらないということが起きる。リカバリーする人員も割けないので、そういうリスクを避けようと思うとそれなりの仕事しか与えられない。しかし、休む以前よりも(適切でない言い方かもしれませんが)「レベルの低い仕事」にしてもらった途端、育児休暇明けの本人のプライドが傷ついた様子が見て取れることに「じゃあ、どうしたらいいのだ?」と一緒に働くメンバーたちも困惑しているといいます。

 この話に「これがベスト」という処方箋はないと思います。働く人、雇う人、周囲で支える人、それぞれの思惑を適切に調整していくほかない。そんな取材を続けている中で「3年間抱っこし放題」なるキャッチフレーズでの、女性のキャリア支援策が登場したのです。

安倍首相の成長戦略には「女性の活躍支援」も含まれている

 前回のコラムでは、アベノミクスの「3本目の矢」となる成長戦略を安倍晋三首相が発表した中の「新卒採用の後ろ倒し」について書きました(参照記事)。実は、その3本の矢の中には「女性の活躍」を支援するという意味で「3年間の育児休業を認める」ことと「待機児童ゼロ」も掲げられていました。現状の育児休業期間ですら浦島太郎状態が発生し、職場は混乱してしまうのに、3年って長すぎる、逆に早期に職場復帰できるように環境を整備することが女性の活躍を支援することなのではないか、という異論をネット上でたくさん見かけました。

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