安倍首相が正式要請! 就活解禁が3カ月後ろ倒しになると何が起きる?サカタカツミ「就活・転職のフシギ発見!」(2/3 ページ)

» 2013年04月22日 08時00分 公開
[サカタカツミ,Business Media 誠]

就活が短縮されると勘違いしている人が多いようだけど

 最近、政府が就活の開始時期を大学4年生4月まで遅らせるよう、経済団体などに要請することを検討しているという話を、テレビのニュースや新聞などで目にした人も多いと思います。4月19日には、安倍晋三首相が首相官邸に経団連の米倉会長らを呼んで、現在の大学2年生(2016年春卒業予定)の就職活動の解禁時期を、大学3年の3月(大学4年生になる前月)にするよう申し入れました。就活の開始時期は、2011年に大学3年生10月から12月に後ろ倒しになったところですが、さらに遅らせたことになります。

日本経団連が公開している「採用選考に関する企業の倫理憲章」。採用選考の開始時期や内定日などについてもここで触れられている

 開始時期を遅らせる理由は「学び終えるまでに進路を決めなくてはならないスケジュールはおかしい」「勉強をする時間を就活に割くのは好ましくない」というあたりだとされています。確かに、就活生の中には大学3年が始まったと思ったら就活をスタートさせ、まったく内定が出ないので大学4年生の卒業時点まで就活一色の生活を送るというケースも珍しくありませんから、後ろ倒しにすることには、その理由を解消するためには大きなメリットがあると考えるべきでしょう。

 しかし、ここには大きな落とし穴があります。それは、政府が後ろ倒しにしようと考えている就活のスタートとは「企業の採用広報の開始時期」なのを忘れている人がたくさんいるということ。以前、このコラムでもインターンシップの実施要項でよく見かける「採用に関係ありません、は嘘かホントか」というコラムを書きました(参照記事)。そのときにも触れましたが、ここでいう就活とは企業の採用広報活動であり、選考活動のことを指しています。学生の行動のことを指しているわけではありません。こういう話が出ると、かならず「縛りの緩い外資系やベンチャーに近い新興企業は抜け駆けする」という反応がありますが、それは過去の話。以前「就活が大好きな就活生」についてのコラムを書いたことがありますが(参照記事)、企業はそういう(元)就活生たちをフルに利用する状況になるはずです。

 就活の開始時期より前でも、学生の行動は別に制約されませんから、企業は学生たちを使って「自主的な」就活セミナーを開催させるのです。そして、そこで「大学OB・OGの先輩社員」を登場させて「就活のアドバイス」をするという名目で「企業の広報」を実施すると。当然、それらの活動は採用そのものには関係ないとされていますし、何よりも学生主導で行われるので政府の要請に反するわけではありません。結果的に就活を後ろに倒したとしても、あの手この手で企業は広報活動(さらにある程度の選考まで)やろうとするはずです。

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